イベント「読んだらうなぎへの食欲が減退するナイスな短編で、うなぎを絶滅の危機から救おう!」参加用短編×2

ウノカミ

イベント 第二回「読んだらうなぎへの食欲が減退するナイスな短編で、うなぎを絶滅の危機から救おう!」参加用(エロ・グロあり)







 編集長からどうしてもと取材を命じられた宿は、千葉県の真ん中あたりで、戦後すぐから、ずっと営業していると聞いた。まさか、こんな山奥だとは。レンタカー、四駆にしておくべきだったじゃないか。


 秘境と言っても良さそうな、そんなおもむきの、舗装されていないでこぼこ道を、ぶうぶう文句だけを元気に吐き続ける女史を助手席に乗せ、走る。いや、のったりと這うように進む。雨など降っていないというのに、ぬめるように黒く濡れた地面に、タイヤを何度も取られ、その度に車体が大きく揺れ動く。


 女史は舌打ちした。


「ていうかさ、まだ着かないわけ? で、なんでカーナビ付いてないクルマ借りるの? なんでスマホのGPS、捕まんないの?」


 クルマを手配したのは、アンタの部下のキラキラ女子だろうが。それと、GPSが捕まらないのは、俺のせいじゃないって。


 GPSどころか、スマホのコンパス機能も使い物にならないことは、まだ伝えなかった。こんな状態でそんなことを言っても、ますます機嫌を悪くさせるだけだ。


「ああ、もう、イライラする」


 女史の悪態には慣れっこだったが、地図もなしに当てずっぽうで走り続けるのには、俺も正直、飽きていた。とにかく、道に寄り添うように流れている川は、来る前にざっと地図で確認した目印の川に間違いないだろう。早く宿に着いて、取材ってことで適当に宿の年寄りの話でも聞いて、名物とかなんとかそんなもんを食って、できれば日が変わらないうちに都内に帰りたい。


「あ、Kくん、今、帰りたいとか思ったでしょ」


 そういうところは鋭い。


「別にいいけどね。アタシも早く帰りたいし。だいたい、なんで首都圏日帰り旅行の宿で、こんなとこ見つけてくんのかな、編集長」


 俺もそう思う。


「ま、いいや。それで、なに食べられるんだっけ?」


 編集長からのメールに書いてあったはずだ。


「あー、メールね。メール。ねえ、もうちょっと揺れないように出来ないの? これじゃ、メールも読めないじゃない」


 言ってるそばから、下から突き上げるような揺れと、前進しないで後退してるんじゃないというぐらいの滑り方。タイヤが空回りして唸りを上げた。


「あ、なに、電波もつながんない。これじゃ、着いても仕事になんないじゃない」


 女史は、うんざりしたように顔をしかめた。



 ◇ ◇ ◇



 特に歴史を感じさせるわけでもない、郊外の普通の住宅に毛が生えた程度の、ショボい建物だった。


「ねえ、本当にここなの?」


 心なしか声が小さい。さすがの女史も、ハズレの気配を感じているらしい。


 俺は建物の入口を指さした。戸の上に、小さな看板がかかっている。


「なに?」


 度の入っていないサングラスをかけている女史には、看板に書かれた文字どころか、看板そのものも見えていないようだ。


「今お伺いしまーす、ちょっとお待ちくださーい」


 建物のほうから女性の声が聞こえてきた。


 女史は口をつぐんだ。


「すみませーん、お待たせしましたぁー」


 建物の戸が開き、白いTシャツにジーパンの小太りの中年女性が、首に巻いたタオルで額の汗を拭いながら駆け出してきた。


「ご予約のお客様ですかー」


 女史が俺にだけわかるように小さく舌打ちした。例のキラキラ女子は、取材ではなく、単に客として予約してしまったのだろう。その不手際に、女史の怒りは沸騰寸前だった。


「クルマ、どこに止めたらいいですか?」


 女史の代わりに俺が窓を開け、愛想よく女性に話しかけた。舗装され区分けされた駐車スペースは見当たらない。クルマも、一台も止まっていない。


「その辺にどうぞぉー」


「その辺って」


「その辺で」


 これ以上は聞いても無駄だろう。俺は、比較的雑草の少ない一角にクルマを向けた。その辺を除くと、どこもかしこも、人の背丈ほどの雑草で埋め尽くされている。少なくとも、駐車場に関しては、手入れの行き届いた感じはまったくない。


「窓、閉めて」


「あ、わりわりい」


 外の空気は、むせ返るほどの熱気で満たされている。窓を開けていたのは一瞬だった。なのに、絶望的な勢いでなだれ込む熱気と湿気が、肌にまとわりついてくる。


 熱く湿った空気には、泥臭いような、生臭いような匂いが混じっていた。



 ◇ ◇ ◇



「すみません、主人は出ていて」


 玄関から続く狭いホールのような空間で、女性は恐縮していた。小太りの、四十前後のおばちゃん。彼女が宿の女将おかみだそうだ。


「ちょっと、客が来るの分かっててあるじがいないって、どういうことよ」


 俺にだけ聞こえるよう、なるべく小さな声で女史が悪態をつく。


「あ、すみません。先週の台風で予約はほとんどキャンセルで。それと、川が溢れたんであちこち大変で。修理やら何やらで。今日は仕入れで出てるんですが、道が悪くて思ったより時間がかかっているようで」


 全部、聞こえていた。


「そうなんですね」


 女史は、何事なにごとも無かったかのように取りつくろってみせた。


「これ、」


 女将が盆に乗せた二人分の茶を差し出す。


「ありがとう。のどかわいちゃって」


 ホールの中は、外よりは幾分か涼しい。古めかしいエアコンの作動中のランプがくっきり見えるほど薄暗い空間。居心地は、建物の外観から思ったほど悪くはない。


 そこら辺の回転寿司で使われてそうな安っぽい大きな湯呑ゆのみに手を伸ばした女史が、慌ててその手を引っ込めた。


「熱かったですか?」


 女将は、ゆっくりとした口調だった。


「ううん、大丈夫」


 女史は、もう一度いちど湯呑ゆのみに手を伸ばし、少しためらいながら、そっと口に運んだ。


「美味しい」


 お世辞ではないようだ。女史の目が、驚きのあまり丸くなっていた。


「お茶の淹れ方だけは褒められるんです」


 女将は嬉しそうだった。


 冷たいものが飲みたいと思っていた俺も、それならということで、気が進まぬまま湯呑を手にとった。


 自分の汗、だろうか。それともよく洗っていないのか。湯呑がぬめっている気がする。女史が手を引っ込めたのは、これだろうか。


 しかし、のどを鳴らし美味そうにお茶を流し込む女史を見て、俺も覚悟を決めた。


 驚いた。


「本当に美味い」


 よく考えると失礼な言い方だったが、先方は気にもしていないようだ。


 湯の温度がちょうどいい。冷たいものを飲むよりも、はるかにやさしく乾きが癒されていく。味もいい。すごくいい。深みの中に複雑な、旨味のような、まろやかな味わいを感じる。単純にのどが渇いていたことを差し引いたとしても、掛け値なしに、単純に美味い。こんなのは初めてだ。


 俺たちがお茶を飲み干すのをニコニコと見守っていた女性が、すかさず声をかけてきた。


「おかわりは?」


「お願いします」


 思わず、女史と俺の声が揃った。



 ◇ ◇ ◇



「じゃ、こちらには取材で」


「そうなのよ、女将さんとご主人に、お話を伺おうと思って」


 女史と女将は、いつの間にか打ち解けていた。


「長いんでしょ、ここ」


「えー、そうでもないですよ。この建物も、十年ぐらい前、私が学生の頃に建て直したばっかりだし」


 女将の言葉に女史の動きが止まった。


「ちょっと待って。十年前に学生ってことは、あなた、まだ三十代さんじゅうだい?」


二十七にじゅうななです」


「学生って、高校生。へー、わっかーい」


 女史の言葉の響きの奥底に、女将の見た目へのさげすみと、それとは裏腹に若さへの妬みが含まれていることを、俺は確かに感じていた。


「そうなんですよー」


 コロコロと笑う女将は、特に何も感じていないようだ。にぶいのか。


「で、ご主人、いつ頃までに戻ってくるとか、そんなこと言ってた?」


 どうやら仕事を思い出した女史が、やることをやってとっととこの場から消え去りたい願っているのが伝わってくる。


「お昼ぐらいには戻ってくるって言ってたんですよ。あ、戻ってきました」


 俺には、女史にも、何も聞こえなかったが、女将には何かがはっきりと聞こえたのだろう。急いで部屋を出ていこうとする。


「あ、待って、私達も一緒に」


 立ち上がろうとする女史を、女将が慌てて制した。


「いえいえ、お客様はこちらで、ゆっくりしていてくださいね。あ、お部屋にお通ししてなくて、すみません。今、すぐにお通ししますから、もう少々こちらでお待ち下さい。主人が戻ってきたら、美味しいお料理とか、ご用意いたしますので。本当、すみません。主人を迎えに行ってきます」


「わかった。お茶、ありがとね。美味しかった」


「いやだぁー、照れますぅー。じゃ、すみません」


 盆を抱えて、女将が部屋から出ていった。


「人たらしだね、Yさん」


 俺は、女将の足音が充分に遠ざかったのを確認してから、嫌味にならないように気をつけて、そう言った。


「何が?」


「いや、ああいう時、とっさにひと言、お礼とか、そういうので声かけるの。うまいよね、昔から」


「ああ……、習慣よ」


 女史は心底つまらなさそうだった。


 口のきき方はともかく、細かい気遣きづかいは出来る女性だった。先々代の編集長、もう二十年近く前か、あの頃は随分と重宝されていた。将来の編集長候補と言われていた時代もあった。が、そこから先はずっとやってこない。女史が熱望していた女性誌への異動も無かった。いくら気遣いが出来ても、女として魅力があっても、今の時代の読者の心を掴む記事をまったく書けない彼女は、会社として売上をさほど期待もされていない地味な旅行ムックの編集部で、ただただ飼い殺しの憂き目にあっている。そんなことは彼女もよく分かっている。しかし、今の待遇を捨てて新しい世界へと飛び出す勇気はない。


 寄生虫のように大出版社のおこぼれに預かる俺のような三文ライター風情にどう思われようが、彼女は気にもとめないだろう。そういう奴だ。未来が閉じたのを理解していても、受け入れてはいない。いや、受け入れてはいるのかも知れない。だが、まだ慣れてはいない。


 女史はカバンの中からタバコを取り出した。


「しばらくやめてたんだけどね」


 彼女は自分自身を嘲るように歪んだ笑みを浮かべ、細く長く、煙を吐き出した。



 ◇ ◇ ◇



 宿の主人は、百八十の俺でも見上げる高さの大男だった。日焼けした肌は、年季の入った農家に見える。実際、服装も作業着のような上下だ。


「今日は、あのクルマで、ここまで?」


 どうやら、驚いているようだ。


「先週の台風で、川が溢れて道がすっかり駄目になって。大変だったでしょう。いやあ、私はクルマは諦めて、今日はバイクで買い出しに行ってきたんですよ、オフロードのバイクで」


 なかなか若々しい。そして、四駆でも無理があったようだ。宿の主人と女将も、俺たちがやってくるとは思っていなかったのかも知れない


「今日はよろしくお願いいたします」


 女史は手早く済ませてしまいたいようだ。


「ええ、ええ。なんでもお聞きください」


 ヒトは悪くないようだ。


 主人の横から女将がまたお茶を差し出す。


「なんか冷たいもののほうが」


 主人は女将よりは気がききそうだ。


「そうですよね、気がつきませんで」


「こいつはあんまり気が利かなくて。どうもすみません」


「今、冷たいもの、お持ちしますね」


「いえいえ、こちらでけっこうです。お茶、とても美味しいですよ」


 女史は苛ついているようだが、そんな素振りは、当然、おくびにも出さない。


 俺はとりあえず主人と女将の写真を取りまくることにした。ライター兼カメラマン兼ドライバー。要は、なんでも屋だ。


 宿自体の由来やら何やらは、特に珍しい話も無かった。先々代が起こした宿を先代が継ぎ、その後、三代目である今の主人が継いだ。編集長が女史のお守りに俺をつけた理由がわかる。この何の変哲もない宿の記事を、ただでさえ面白いものが書けない女史に書かせたらどうなるか。


 いや、そこまで読んでるなら、わざわざ取材に寄越よこすなよ、編集長。


 料理は捕れたての天然物のうなぎが自慢だという。だが、ここ数年は、環境が悪くなったのか、それとも餌の質が落ちたのか、満足のいく天然物はなかなか捕まらない。しかも、先週の台風で仕掛けは流れてしまった。ようやくここ数日になって改めて仕掛けてみたものの、困ったことに、うなぎはまったくかからない。それなら養殖物を仕入れてきてもよさそうなのものだが、それは何となく主人のポリシーに反する。つまり、俺と女史は、残念ながら、うなぎ料理にはありつけない。


 それはそれで残念だが、それよりも、ここまで来ておいて、自慢の料理の写真の一枚も無いというのが、さすがに困る。


 とりあえず、いつも出すような、ということは、どこの宿でも出てくるような、簡単な料理で良ければ準備できるらしい。謙遜も混じっているのかも知れないが、ここまでの流れで行くと、料理に期待はできなさそうだ。


 既に興味を失っているとおぼしき女史は、このくそつまらない取材をとっとと切り上げようと決意したのだろう、なるべく早く料理を出して欲しいとの旨を伝えて、盛大な笑顔とともに、いかにも虚仮威こけおどしの大げさなシステムノートを畳む。


 ふと、手を止めた。思い出したかのように聞いた。


「そういえば、このあたり、河童の言い伝えがあるんですか?」


 女史の質問を聞いて、編集長が、なぜ、この宿をわざわざ選んだのかがわかった。


 河童は、今の編集長の趣味みたいなもんだ。わざわざ本人が、岩手県まで出向いて、数ヶ月に及ぶ取材を敢行したことまである。


 さすが大出版社。余裕のある素晴らしい会社だ。


 俺は心の中でため息をつき、首を振った。


 河童の話じゃ、しょうがない。今回の取材でいいネタが見つかれば、あとあと本人がやってくるつもりなんだろう。


「河童?」


 しかし、主人の反応は無かった。


 終わった。今回の取材、何もかも終了。


「そうなんですね」


 女史も同じ思いだったのだろう。曖昧な半笑いを浮かべていた。


「河童じゃないですけどぉ」


 主人の斜め後ろに控えていた女将が小さな声を上げた。


 女史の視線と合わせて俺もカメラを女将に向ける。


「ウノカミサマがぁ」


「余計なことを言うな」


 主人が女将の続きをさえぎった。


「ウノ……?」


 女史が食らいついた。


「あ、いえ、河童じゃないんですが、川べりから水に引きずり込まれるような、そんな言い伝えがありまして。いや、古い迷信です。お前はいいから下がってろ」


「言い伝え、ですか?」


「んー、あんまり気持ちのいい話でもありませんし。迷信ですから」


 主人はすまなそうに口をつぐんだ。


 残念ながらこれ以上は期待できそうにもない。


 ほんの一瞬だけ展開が見えそうだった取材も、もはやここまで。試合終了。あとは食事をささっと片付けて帰るだけだ。


 女史も、多分、同じことを考えている。


「そういえば、ご主人、お年は」


 ノートを閉じながら、女史が気軽に尋ねた。


「四十八になります」


 宿の主人は、女史と同い年。


「……、お若いですね」


 俺は、冷や汗の出るような思いで、こみ上げてくるどす黒い笑いをなんとかこらえた。



◇ ◇ ◇



 控室代わりに使わせてもらっている部屋に戻った女史と離れた俺は、女将の案内で館内のあちこちを写真に撮っていた。といっても、建築的にすぐれた要素のあるわけでもない狭い館内、すぐに撮るネタもなくなってしまう。


 水の音が気になった。常に水の音が聞こえる。


「この建物、半分ぐらい川の上に建っているんですぅ」


 川から引いた水ということではなく、川そのものの上に建っているという。歴史のある建物でもないのに、そんなものが建てられるのか。何か事情でもあるのだろうか。


「建物は、主人が、ほとんどひとりで」


「そうなんだ」


 そりゃすごい。


 田舎の宿なんかで昔よく見かけた違法建築って奴だろう。自分で建てたのならなおさらだ。それにしても、一人でここまでというのはすごい。その話を聞いてみたいものだと思ったが、万が一、この建物が違法建築なら、いくら話が面白くても、雑誌で紹介するのはアウトだろう。法令遵守コンプライアンスのおかげで面白い記事が書けなくなったのは、地味に痛い。


 建物の裏庭に当たる部分に出て、全容がようやく見えてきた。建物が桟橋のように川面の上に建っている。


「なるほど」


 川沿いに建つ大きな建物に目が止まる。


「あれは?」


「あっちは自宅です。先代と先々代と一緒に暮らしています」


 生きてたのか、先代、先々代。


「隠居して、野良仕事をしています。あとは、川で漁を」


 建物の脇に、細長い竹のかごが無造作に放り出されていた。


「あれは?」


「あれ?」


「あの竹かご」


「ああ、あれは、うなぎ取りのかごです。最近は、いい餌がなあって、愚痴ばっかり言ってます」


 農作業がメインでうなぎ取りが副業、宿は趣味みたいなものなのだろう。主人のあの精悍な浅黒さなど含め、合点がてんがいった。


「さっき言ってたウノカミってのは?」


 俺は気になっていた言葉の意味を聞いてみた。


「ああ、あれは、すみません」


 女将はぺろりと舌を出し、口をつぐんだ。


 これ以上は聞いても無駄か。


 宿に戻ると、真っ青な顔で切羽詰まったきつい視線の女史が、俺を待ちかまえていた。


「Kくん、ちょっといい?」


 女将と別れ、女史とふたりで部屋に戻る。女史は急いでいるようだ。少し震えている。


「あのね、部屋のトイレが全部、故障してるんだって」


 部屋に戻るまでもなく、女将の姿が消えたところで女史が話しはじめた。


「全部?」


「よくわかんないけど、先週の台風で配管が詰まったとかなんとか」


 女史はいらついてる。細かい話はどうでもいいようだ。


「なるほど」


 事情はわからないが、俺も細かいことは聞かないことにしておく。


「で、離れがあるって」


「離れって?」


 俺は無言の女史に連れられ、建物の外に出た。


「あそこ」


 川岸から伸びる平均台のような細く頼りない橋が、川の中に立つ小さな小屋に通じていた。


「あれは?」


 さっき、女将と外に出たのは自宅の側だった。そこからは小さな林が目隠しになって川の中の小屋は見えなかった。


「あれが、トイレ」


「あれが」


 川の上に立つトイレ小屋。これは、面白い。


 女史の声がかすれていた。


「ついてきてくれない?」


「どこに?」


「だから」


 女史は目だけで川の中の小屋を示す。


「でも、」


「お願い」


 女史の声はかすれていた。そして、さっきよりも明らかに震えがひどくなっていた。



 ◇ ◇ ◇



 いくら周りの風景を見て気をそらそうとしても、例え両手で耳をふさいだとしても、小屋の中から聞こえてくる盛大な音を、聞かないわけにはいかないだろう。女史にとっては耐えがた屈辱くつじょくだ。が、それでも俺についてきてくれというのには、何か事情があったに違いない。このあと女史が晴れやかな表情で小屋から出てきたとしても、俺は真面目な顔で迎えることだろう。それが大人の礼儀というものだ。


 それにしても、川の上のトイレ、これも間違いなく違法建築だろうが、考え方によっては排泄物の処理をせずに済む合理的な方法かもしれない。


 予想通り、女史が排泄する大きな音が聞こえてきた。俺は、できれば見ないで済まそうしていた小屋の下の水面を、つい好奇心で見てしまう。


 女史の排泄物めがけて、水面が盛り上がるほどの魚の群れが、騒がしく集まっていた。続けざまに落ちていく排泄物に、絡まるような魚影が群がっている。いや、魚ではない。絡み合いもつれあいながらヌメヌメと動くウナギだ。ウナギが、女史の排泄物を求めて水面を激しく泡立てている。


 俺は苦笑いしていた。これは、いくらなんでも女史には言えないだろう。


 と、この景色を見ながら密かに怖れていた事態が、どうやら俺にも訪れていた。


 小屋の扉から出てくる女史は無言だった。


 俺も、無言のまま、女史と入れ替わりで小屋のトイレに入る。急な腹痛だった。我慢出来ないほどの。


 腰掛けた姿勢で一息ついた俺の耳に、小屋の外で女史が上げる悲鳴が聞こえてきた。女史も見たのだろう、排泄物に群がるあの連中を。だが、しょうがない。



 ◇ ◇ ◇



 さっき見た光景のことは、お互いに口にしなかった。


 料理を待たずに帰ってもいい気分だった。もはや、この場にいたくない。女史も同じ気分だろう。


 女史は鞄に入れてあった文庫本を読んでいた。出先でよっぽど暇だった時に備えて一冊は必ず本を持ち歩いている。以前にそう言っていたが、本当だったようだ。タバコは喫わなかった。タバコを喫うと腸が動く。腸が動くと、またあのトイレを使う羽目になる。それだけは避けたいと思っているはずだ。


 それにしても、なぜ、女史は俺についてきてくれと言ったのだろうか。あんな光景を見せつけると分かっていたら、そんなことは言わなかったはずだ。いや、あんな光景はともかく、間違いなく音は聞こえるはずで、それだけでも、普段の女史から考えると有り得ない。


 話すことは無かった。かといって、暇を埋めるためにスマホを見ようにも、やはり電波はつながらない。


 女史は本を置いた。


「電話ってあるのかしら」


 俺に聞いているわけでもなさそうだが、女史がそう言った。


「ああ、携帯じゃなくて固定電話?」


「うん。なにかあった時に連絡ぐらいはできるかなって」


「そうだなあ」


 料理が出来上がるまでの時間も知りたい。女将にでも声をかけてみるかと俺が腰を上げたところで、香ばしい匂いが漂ってきた。


 女史もすぐに気がついた。


「これは……」


 醤油の焦げる匂いだ。


 ほどなく、女将が戸を開けて入ってきた。


「お料理の方、もうすぐ準備できますので」


 笑いをこらえるような表情をしている。


「こちらでお召し上がりになりますか、それとも広間のほうで」


「広間なんてあるんだ」


「広間ってほどじゃないんですけど、いちおう、お食事用の部屋がありまして」


 女史の失礼な物言いは、女将の耳には響いていなかった。


「じゃ、そっちで」


 なんとなく、気分を変えたかった。女史も、そうだったのだろう、異論は無かった。



 ◇ ◇ ◇



 座敷ではなく、川の見える板張りの部屋だった。写真を取るために女将に案内された時には来なかった。


「あ、あの時はまだ片付けてなかったんで」


 いちおう、そういうことは気にしているらしい。


 テーブルの上には、既に、ごくありきたりの料理が並んでいた。刺し身、煮物、焼き魚、おひたし、きんぴら、冷奴、デザートなのか、羊羹ようかん。おひつは無かった。


 あの香ばしい匂いはますます強くなっている。


「この匂いは」


「わかりますよね。いいのがかかったって、嬉しそうでした」


 どうやら、うなぎだ。


 俺は離れの小屋で見たあの光景を、なるべく思い出さないようにしていた。


「うなぎ?」


 女史が聞いた。


「ええ」


 女将が嬉しそうに答える。


「やったあ、よかったあ、うなぎの写真、ちゃんと撮ってね」


 わかった。女史は目が悪い。なので、さっきの光景もよく見えていなかったのだろう。人間、何が幸いするか、わからないものだ。



 ◇ ◇ ◇



「美味しい」


 女史の言葉に嘘はない。確かに、あの光景を忘れさせるほどの美味さだ。


 気がつくと重箱の中は、ほとんど空になっていた。


「こんなに美味しいうなぎ、ありがとうございます。今日はこちらにお伺いできて本当に良かった」


 女史の表情は穏やかだった。


 主人は照れ隠しに何度もうなずいた。


「ちょっと、これ、しっかり記事にして宣伝しないとね」


 目が輝いていた。


「いえ、あまり宣伝されても、こんなにいいのは、なかなか捕まらないんで」


 主人は謙遜していた。


「やだ、これ、うなぎそのものもすごく良かったけど、ご主人がいい仕事なさるから」


 主人に対する扱いが格段に良くなっている。


「いえいえ。私の腕なんか、そんな。自分もこんなにいいのは久しぶりで。先週の台風からずっと捕れてなかったし、もうこんないいのは捕れないのかなって思ってたんで、つい嬉しくて」


「奥様も、うらやましいわあ、こんな美味しいうなぎ、いつもいただけるなんて」


 女将に対する口ぶりまで良くなっている。


「いえいえ、私はもう、ウノ……うなぎは、もったいなくって」


 小さくなる女将を主人がにらみつけた。


「おまえは黙ってろ」


「やっぱり、環境がいいから、こんなに美味しいうなぎが捕れるんですか?」


 いいぞ、女史。うなぎのおかげで記事の内容が濃くなりそうだ。


「いやあ、専門家じゃないんでわかりませんが。ただ、いい餌があるとやっぱり違いますねえ」


「いい餌ですか」


「まあ、そういうのも含めて環境って言っちゃえば、確かにそうなのかも知れません」


「なるほどー」


 残念、あまり広がらず。というか、そこで終わらせるな、女史よ。


「そうだ、うなぎを捕る仕掛けって、どのあたりに設置してるんですか?」


「いや、もう、すぐそこですよ。離れの小屋のすぐ下あたり。昨日沈めておいたのをついさっき上げたら、いいのがかかってて」


「離れの……小屋……ついさっき?」


「ええ、ええ。あの、ここからは見えませんが、離れの小屋があって、そのすぐ下で、ついさっき」


 主人の言葉を聞いて、女史の箸が止まった。どうやら気づいてしまったようだ。


 曖昧な笑みを浮かべた女史が、俺に目で助けを求めてきた。



 ◇ ◇ ◇



 何度押しても無駄だった。エンジンがかからない。バッテリーがいかれてる。油断した。この夏の暴力的なまでの高温で、完全にやられてしまったようだ。


 JAFなりなんなりに連絡しようにも、スマホの電波が届かない。宿の固定電話は、まったく通じない。途中の電柱が倒れて、電話線が切れている。スマホが通じないのも、途中の中継局が流されたからだ。


 宿の主人に聞いてみたが、クルマは仕入れに行った先に置いてきてしまったそうだ。バイクのバッテリーから充電と思ったが、ケーブルがない。そもそも、上がったバッテリーにケーブルをつないでどうこうとか、そういうのは、俺も主人もやったことがない。ケーブルがあったとしても、意味はない。


 こんなタイミングで、四駆でもないこんなクルマで、よくここまでやってきたものだ。我ながら自分たちの無謀さに呆れる。全面的に、お手上げだ。


「泊まっていきますか」


 宿の主人は商売っ気で言ったのではなく、半ば同情、半ば呆れてのことだろう。俺はそれでもかまわないが、女史はどうだろう。


「しょうがないわね」


 あっさりとしたものだった。


「じゃ、しょうがないから、少し飲む?」


 断る理由もない。


「あんまり気の利いたものも、ご用意できませんが」


 と言いながら、主人の作るツマミは、先ほど食べたばかりの「うなぎ以外の料理」よりも、よっぽど美味い。食事もこういうのを出したほうがいい。そんな余計なアドバイスはしなかったが。


「このお酒、美味しい」


 女史がコップのどぶろくを、グビグビと空けていく。もとからけっこうな酒飲みだ。それは知っている。それにしても、ハイペース。ついて行ったら大変なことになる。


 くせのない飲みやすい酒だったが、微かに独特のくさみというか、そういうものを感じる。それと、あぶらっこいような、咽喉のどからみつくようなのどごし。もちろん、飲み干してしまえば、そんな違和感は、すぐに消えるのだが。


「このお酒は?」


「隣で、」


 女史の質問に、女将が嬉しそうに答える。そして、また主人に煙たがられ、追い払われる。なんなんだ、このワンパターンは。


 しかし、隣で、という話は聞き捨てならない。隣というと、昼に見た先代先々代が住んでいるあの家なのだろうか。


 今までの流れから考えるに、このどぶろくは、多分、自家製。酒造免許などを取得していない、つまり、密造酒。


「いえ、なに、まだまだありますので、お気になさらず、いくらでもお召し上がりください」


 一升瓶いっしょうびんを持ち上げた主人のすすめに従って、女史はまた、両手に持ったグラスで、白く濁ったどぶろくを受け止める。トプンと跳ねた白い酒の一滴が、女史の頬にへばりつき、ゆっくりと垂れ落ちた。



 ◇ ◇ ◇



 トイレだけでなく、排水管が詰まっているせいで、風呂も使えないと言う。それこそ、ドラム缶の五右衛門風呂でもなんでもいいから、今日一日の汗ぐらいは流したい。


 女将から、申し訳なさそうに渡されたのは、桶に入った、なまあたたかく濡れた手ぬぐいだった。これで身体を拭けということか。


 すっかり諦め顔の女史は、むしろ清々すがすがしい表情で桶を受け取り、鼻歌でも歌いだしそうなご機嫌で自分の部屋に入っていた。


 それが、数分前。


 女史は、また、切羽詰まった表情で俺の部屋にやってきた。


「トイレ……」


 もう少し明るいうちに行っておいたほうがよかったのでは、というのは後から思いつく話だ。こればっかりはしょうがない。


 離れの小屋に通じる橋の欄干らんかんには、似つかわしくないハイテクなブルーLEDが取り付けられていた。ほたるの光の雰囲気でも演出しているのだろうか。意図がさっぱりわからない。


 昼間と同じように盛大な音を立てて排出した女史に続いて、俺も小屋に入り、重たくなっていた腹の中身をすっかりぶちまける。ボトンボトンと水面に落ちる俺の排泄物。それに続いて巻き起こる激しい水音。一瞬、昼間見たうなぎと、その後に食べた蒲焼を思い出し、こみ上げてくる。グッとこらえて、なんとか頭の中から押しやる。


 酔いと暗がりのおかげで、羞恥心しゅうちしんはどこかに吹き飛んだ。細い橋の上、酔った女史のふらつく足取りに思わず手を出した俺に、バランスを失った女史がもたれかかるように身体を預けてきた。薄い服の下、汗ばむ肌、さらにその下のかすかな鼓動。


 二人で部屋になだれ込んだあとは、まとわりつく服をもどかしげに脱ぎ捨て、むさぼるようにお互いの唇を求め……。


 身体の芯から熱くたぎほとばしりは、夕方食べた例のうなぎのパワーだろうか。女史のヌメる肌に指をすべらせ、乳房の頂点で待ちかまえていた固い乳首を頬張ほおばる。彼女は声を押し殺し、大きく背中をそらした。早く彼女をつらぬきたいと焦る俺を焦らすように、彼女が体勢を入れ替えた。いつもより固く、キツくそそり立つ俺の分身に、女史が迷わず両手を添える。愛おしげに指で撫で回し、尖らせた唇を近づけ……、小さく伸ばした舌で先を舐め回す。つばを飲み込み、丸く広げた唇で捕まえる。すべてを受け入れるように、のどの奥深くまでくわえ込み……。彼女は頭を前後させる。最初はそろそろと、やがて激しく。来るべき頂点を予感しながら、俺は、ひとときの快楽に身を委ねた。



 ◇ ◇ ◇



 何度も繰り返し求めあった俺たちは、弾んだ息を整えるよう、おだやかな気分で、布団の上に横たわっていた。


 女史の髪が俺の脇をくすぐる。さっきまでなら、それだけの刺激でまた劣情をもよおし、彼女の腰に挑んだはずだが、身体の芯に残る気怠い疲労感は欲情を上回っている。


「このまま寝ていい?」


「ここで?」


「そう、ここで」


 かまわない、そう言おうとした俺の口を彼女の唇がふさいだ。


「怖いの」


 長い口吻くちづけからようやく身を離した彼女が言った。


「怖い?」


 女史は、気乗りのしない表情で、昼間見た光景を打ち明けた。


 俺が女将と宿の外を歩き回っている頃、腹の痛みを感じた女史は、主人にトイレの故障を説明され、川面に立つ離れの小屋を示された。途方とほうれながらも、腹の痛みに耐えかねた女史はひとりで細い橋を渡り、小屋に向かった。


 場違いなほど綺麗に磨かれた便器の蓋を開けた女史は息を呑んだ。何かがいた。目のついた、細長い何かが。蓋を締めた女史は動転したまま戻り、そこで俺に遭遇した。


 女史はもはや何も言わず、俺の手を強く握りしめていた。


 何かの正体に心当たりが無かったと言えば嘘になる。あえて言うことも無いだろう。


 女史はいつの間にか寝息を立てていた。


 その眠りを邪魔しないように見守る。


 間もなく、俺も眠りに落ちた。



 ◇ ◇ ◇



 朝になっていた。


 隣で寝ていたはずの女史の姿がない。部屋に戻って着替えでもしているのか。


 女史の部屋の戸を叩く。返事がない。


 食堂に向かう。何か飲み物でも飲んでいるのかもしれない。


 いない。


「あ、お連れ様、お帰りになりましたよ」


 俺の姿を見つけた女将が話しかけてきた。


「帰った?」


「ええ、今朝、知り合いがクルマで来てくれたんですけ、そのクルマを見つけて、乗せて欲しいって頼み込んで」


 女史ならやりかねない。が、俺を置いていくのはどうか。


「荷物は?」


「急いでまとめて」


 女将に開けてもらった女史の部屋はもぬけの殻だった。


「俺にも声かけてくれたらよかったのに」


「よくお休みのようでしたので」


 女将が笑いを押し殺した表情に、俺と女史の昨夜を知っていると言わんばかりの何かが隠されていた。そりゃそうか、泊まっているのは俺たちだけで、それで夜中にあれだけ大声あげてりゃ……。


 しかし、女史だけが帰ってしまったのはともかく、俺はどうやって帰るのか。クルマはどうなったのか。


 セルボタンであっさり起動したエンジンの音を聞いて、俺の中の凝り固まった緊張のようなものが一気にほぐれる。


 だがしかし、腹が痛くなってきた。激痛。


 ひたいに浮かぶ脂汗あぶらあせは、熱さのせいではなく、切羽詰まった痛みのせいだ。


 取るものも取りあえず、例の小屋へと足を運ぶ。昨夜、女史と一緒に渡った細い橋は、どうしようもないほど、ぬめっている。油断していたら足を取られそうなほどに。


 便座の蓋を開けようとして、女史の昨夜の話が頭をよぎる。覚悟を決めて開ける。大丈夫だ。得体の知れない何か、多分、例のあれ、あれはどこにも見当たらない。


 俺はズボンとパンツを急いで下ろし、便座に腰をおろした。この痛みの素をすっきりと出してしまわないことにはどうにも収まらない。


 ブリッという音とともにえた匂いが漂ってくる。自分のでありながら、吐き気を催す。出る。痛みは収まらない。小屋の下の水面がざわめく音を感じる。もちろん、それはわかっている。が、それどころではない。尻の穴が熱い。酸が、俺の尻の穴を焼く。けれど、止められない。


「!」


 俺は腰を浮かせた。叫ぼうとしても、あまりの衝撃に、声が出てこない。


 尻の穴が締まらない。太い、思った以上に太い何かが、俺の尻の穴にズドンと飛び込んでいる。もがきながら、俺の中へと深く侵入してくる。


 ありえない。


 恐怖。


 と、吐き気。


 半ば腰を浮かせたまま、小屋の扉を開けた。どんなに恥ずかしい姿でも、助けを求めなければならない。このままではまずい。


 尻の穴から侵入した何かが、ブルンと震え、さらに奥へと伸びてくる。


 叫ぼうとした瞬間、腹の中で何かがコリッと噛み付いた。


 コリッと。


 熱気とともに、腹の中が破れたことを感じる。


 後ろを見ることも、手を伸ばすことも、怖くてできなかった。最悪の中の最悪。知ってしまえば打ち消せない現実になる。まだ、痛みに耐えながらこれが夢だと思うほうがマシだ。


 小屋から飛び出そうとした俺は、膝の下まで下げたパンツに足を取られ、頭から水面に落下する。わずか数秒の出来事。川岸を見た俺の視線に飛び込んできたのは、無表情の老人。先代? 先々代?


 現実味はひとつもない。にも関わらず、川に落ちた俺は、為す術もなく水を飲む。緑色に濁った水中から、きらめく水面を見上げ、何かをつかもうと必死で手を動かす。しかし、何もつかめないまま、身体がグンと沈み込む。


 そして、もう一度、はっきりと、コリッと、俺の腸は内側から噛み切られ、噛み切った何かが腹の中で暴れだす。吐き出した息のあと、絶望とともに、逃れようのない水の塊が、俺の喉を押し潰す。


 漂い始めた血を嗅ぎ分けた細長いウナギどもが、俺に群がり始めている。手で追い払おうとする。嘲笑あざけわらうように、ウナギたちが俺の身体に歯を立てる。


 諦めて目を閉じたあと、最後の抵抗のために目を開ける。その先に見えたのは、驚いたように大きく目を開けたまま、昨夜のTシャツ姿のママ仰向けで水中に漂う女史。


 消えゆく意識に抗おうとしながら、怖れを越えた何かを意識しながら、彼女に手を伸ばす。


 次の瞬間、カッと開かれた女史の口から、丸々と肥えたウナギが顔をのぞかせた。

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