金曜夜、官邸前の僕だけの女神(現代ドラマ短編)
官邸前のデモには既にだいぶ人が集まっていた。一時期は低調だったデモも、加計と共謀罪のおかげで、またかなり盛り上がっている。
デモに来たきっかけは大学の友達のYの誘いだった。Yは反原発とかではまったくない。むしろ逆で「反原発の連中、頭悪いよな」と蔑んでいる。にも関わらずデモに来たのは「どんだけマヌケなことやってるか見ておこうと思って」ということだ。
僕もデモは嫌いだ。デモで世の中が変わるなんてありえないと思っている。だから、Yと一緒に見物で来た、つもりだった。彼女と出会うまでは。
一目惚れというのが本当にあることを知って僕は切ない。彼女は僕のことを何も知らない。僕はよく知っている。ネットで検索すると色々出てくるから。ほとんどがネトウヨの罵詈雑言だ。見るに堪えない、と言いながら全部見ている。
僕は彼女目当てでデモに通い続けている。
Yは笑う。おまえなにやってんだ、と。
Yが二次元のキャラに夢中になってるのと同じことだ。どっちにしたって手は届かないんだぜ。
彼女は僕の女神なんだって。
そこに意味なんか求めていない。
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