第42回にごたん参加 千の星

ある日、突然、(『千の星』の1、現代ドラマ短編)

第42回にごたん参加作品、使ったお題【プレリュード】【幾千の星】<熱>





 オレはいつものようにカクヨムの小説管理ページを開いた。


 どうせ今日も星どころかPVも増えていないだろう。そんなことはわかっている。けれど、日々のチェックは習慣になっている。悲しい習慣だ。


 その日は違った。星が増えている。しかも書いた小説のすべてに。


 なぜそんなことがわかるのかというと、簡単な話だ、オレは毎日ひとつも増えない星とPVを見続けている。だから、その数を覚えているのだ。悲しい記憶だ。


「オオッ」


 思わず声を出してしまった。


 と、あたりを見回す。仕事中にカクヨムを見ているのはよろしくない。それぐらいはオレにもわかる。バレていない。よかった。


 オレはもう一度画面に集中した。星が増えているということはPVも増えていないとおかしい。


 ……


 確かにおかしい。オレの小説のPVがこんなに増えているはずがない。


 ひと桁だったPVは少なくとも二桁に。二桁は三桁に。つまり、全部ひと桁ずつ増えている。


 ははーん、これは性質たちの悪いイタズラだな。こんなことをして何が楽しいのかさっぱりわからないが、全然読まれていない作者のPVをどかっと増やして楽しんでいるやつがいるんだろう。


 それならそれでしょうがない。まあ、明日になったらおさまるだろう。


 金曜だった。夜は会社の飲み会があり、帰りは遅くなった。いたずらだろうなどと思いながら実は「本当はどかっと読まれてんじゃねえの」などと期待していたにも関わらず、すっかり酔っ払って帰ったオレは家のPCを開くことはなかった。ちなみにオレはスマホを持っていない。


 それが始まりだった。

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