第12話 家路
午後の理科の授業は全く身が入らず、授業を担当していた先生は真っ青になっている私を心配して保健室に行くように勧めてくれたが、結局総体することにした。保護者に迎えに来て貰ってはどうか、とも言われたけれど、一人で大丈夫だと断った。
教科書やノートなどが入ったカバンを持って教室を後にし、階段を下りて靴箱に向かう。
その途中、職員室の前で何人か警察の人たちが教頭先生を含めた複数の先生と話しているのが見えた。その中には、白木先生と電話が繋がらないと話していた藤原先生たちの姿もあった。
警察の人の話によると、白木先生の住んでいるアパートへ行き、大家さんから部屋の扉を開けて貰ったところ、部屋には倒れている白木先生の姿があった。
意識があり、目立つような外傷は見られなかったが、念のため病院で診察を受け、翌日の午前中には事情聴取を行うと、説明していた。ちなみに、部屋は争った形跡も見られないということだった。
私は靴箱で靴を履き替えると、校門を出た。ふらついて思うように動かない足を何とか動かして自分のアパートを目指した。
どうか家に着くまでの間、あの人に絶対に会いませんように、と心の中で祈りながら。もしも今あの人に会ってしまったら、確実に正気を失ってしまう気がしたから。
けれど、家に着くまでの間、彼の姿を見ることはなく、私の不安は杞憂に終わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます