第12話 家路

 午後の理科の授業は全く身が入らず、授業を担当していた先生は真っ青になっている私を心配して保健室に行くように勧めてくれたが、結局総体することにした。保護者に迎えに来て貰ってはどうか、とも言われたけれど、一人で大丈夫だと断った。

 教科書やノートなどが入ったカバンを持って教室を後にし、階段を下りて靴箱に向かう。

 その途中、職員室の前で何人か警察の人たちが教頭先生を含めた複数の先生と話しているのが見えた。その中には、白木先生と電話が繋がらないと話していた藤原先生たちの姿もあった。

 警察の人の話によると、白木先生の住んでいるアパートへ行き、大家さんから部屋の扉を開けて貰ったところ、部屋には倒れている白木先生の姿があった。

 意識があり、目立つような外傷は見られなかったが、念のため病院で診察を受け、翌日の午前中には事情聴取を行うと、説明していた。ちなみに、部屋は争った形跡も見られないということだった。

 私は靴箱で靴を履き替えると、校門を出た。ふらついて思うように動かない足を何とか動かして自分のアパートを目指した。

 どうか家に着くまでの間、あの人に絶対に会いませんように、と心の中で祈りながら。もしも今あの人に会ってしまったら、確実に正気を失ってしまう気がしたから。

 けれど、家に着くまでの間、彼の姿を見ることはなく、私の不安は杞憂に終わった。

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