第11話 狼狽

 一時間目の授業が終わってから、すぐに沙織のスマートフォンで電話をかけた。 先程と同じく電話は繋がらない。LINEでメールも送ったが、一向に既読にならない。ホームルームで担任教師が出席を取っている際、瑞来ちゃんの順番が回ってきた時に「体調不良で欠席すると連絡があった」と担任は口にした。沙織たちは原因が分かりほっとしていたが、私は納得出来ずモヤモヤとした感情だけが残った。

 ホームルームを終え、出て行こうとする担任を呼び止め、瑞来ちゃんの様態について訊ねると、「腹痛なので休ませたいと保護者から連絡があった」とのことだった。

 しかし、体調不良の理由を聞いてもやはり納得することは出来なかった。

 四時間目の体育の授業が終わり、着替えを済ませて教室に向かう途中、職員室のの前を通ると先生たちが神妙な顔つきで何やら話しているのが見えた。立ち止まり、その会話を聞いていると、

 「白木先生と連絡が取れないんですよ。もう昼ですよ」

 「私もホームルームが始まる前にご自宅の方と携帯電話に掛けたんですが、どちらも繋がらなくて。おかしいですね、今までこんなことなかったのに……」

 「先程、事務室の方にも確認しましたが、白木先生から欠勤の連絡もないようですし、万が一のことを考えて警察に連絡を……」

 先生たちの只事でない会話を聞き、私たちはお互い顔を見合わせた。沙織と直美は、

 「六時間目の授業、国語だったよね? 白木先生どうしたんだろう?」

 「藤原先生、警察に連絡するって言ってたけど、白木先生に何かあったのかな?」

 先生たちの会話を聞いた瞬間、昨日スーパーの前で会った白木先生とカラキさんの姿が脳裏をフラッシュバックした。私は自分の身体から一気に血の気が引いていくのを感じた。

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