第5話 自室にて
夕食の後、今日あったことを姉に話してみた。今朝通学路で見たカラキさんがクラスでも有名だったこと。下校途中に酒屋さんの隣にある自動販売機前で彼に話しかけられ、驚いて逃げてきたこと。
姉は時折相槌を打って私の話に耳を傾けていたが、今朝と同じく対して興味はないようだった。
やがて、話を全て聞き終えた姉は口を開いた。
「うちのクラスもあんたんとこのクラスと変わらないよ。朝から放課後まであの人の話で持ち切りでさ。他に話すことないのかよ」
文句を言いながら、机の上に置いてあったサイダーの缶に手を伸ばし、勢いよく飲む。
缶を乱暴に机の上に置くと、
「あの人絶対たらしだよ。沙耶がこの前バイト先で四、五人の女子グループに話しかけてるの見たって言ってたし。その後、沙耶も話しかけられたらしくてさ」
「カラキさんに? 沙耶さん何て話しかけられたの?」
私がそう聞くと、姉は更に不機嫌そうに顔を歪めた。
「最初は商品の置いてある場所を聞くだけだったらしいけど、最近じゃあ女子に人気の店とか雑貨屋とか、とにかく女子が行きそうなところを聞いてくるんだと。沙耶のやつ嬉しそうに話すんだよ」
姉は話し終えると、また缶に口を付けた。姉は暫く黙っていたが、やがて思い出したように、「勉強でもするか」と呟いて、部屋に放り投げてあったカバンに手を伸ばすと、数学の教科書とノートを引っ張り出した。
勉強嫌いな姉にしては珍しいな、と思った。
私も姉の机の隣に設置されている自分の机に向かう。今日出された国語の宿題に取り掛かろうとカバンを開けた。
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