090
「こ……このアマぁぁぁぁぁぁーっ! ぐはっ!」
怒髪天を衝く勢いで挑みかかっていったが、あっさりカウンターのヒザ蹴りをもらってしまい、崩れ落ちる。
ばったりとうつ伏せに倒れた。
「男の心をへし折ってプライドをズタズタにし、足元に這いつくばらせるのは何度やっても飽きることはない……。
そうだ、そのパンツも奪い去ってやれば、貴様の心はさら深い悲しみと屈辱に包まれるかなぁ……?」
アゴの下から光がさしているような、不気味な笑み……!
指をワキワキさせながら、パンツにも手を伸ばしてくる……!
「なっ……なにっ!? や……やめろ変態っ! やめろっ! やめろっ! やめっ……ああんっ!?」
俺は足蹴にして暴れようとしたが、あっさりとパンツを引き抜かれてしまった。
慌てて大事なところを手で覆い隠す。
「ふふふふふふ! 喘ぎ声のような悲鳴と、股間を覆い隠す仕草……!
まるで
いいぞ、いいぞ、いいぞぉ……いいぞぉぉぉ……!」
サド女は俺のパンツを握りしめたまま肩を抱き、無上の喜びのように身体を震わせる。
俺はたしかに屈辱を感じていたが、それ以上にコイツに対してドン引きしていた。
なんか怖ぇよ……!
でも、フルチンにさせられては為す術がない……俺は悪代官に襲われた町娘のように、股をぴったりと閉じ、なよなよと身体をよじって逃げるしかなかった。
その逃げっぷりが嗜虐心を刺激したのか、サド女はよそ見するのも惜しむように、後ろ手でパンツを放り捨てた。
それがまた、うまいこと窓の外に行ってしまう。
俺の絶望は決定的なものとなり、よほど情けない顔になっちまったのか……サド女の表情はさらに嫌らしく歪んでいた。
口なんか、三ヶ月みたいに裂けてやがる……!
「いいことを考えたぞぉ……今、この建物のまわりには大勢の生徒がいる……!
もちろん女生徒も……! そこに、今の貴様を放り出したら、どうなるかなぁ……?
恥ずかしい姿を見られるのはもちろん……貴様のみじめな姿はスマホで撮られ、ネットにもバラまかれるであろうなぁ……!」
俺は、殺人鬼から逃れるように這い逃げていたが、隅に追い詰められていたことに気づく。
触れた壁の冷たさにも「ヒイッ!?」となってしまうほどにすっかりビビっていた。
「そう、これは、去勢……!
二度とハーレムなどという考えを起こさぬための、社会的去勢……!
貴様は在学中、いいやもしかすると一生、ハーレムどころか彼女も作れなくなるのだ……!」
覆いかぶさるように、両手を伸ばしてくるサド女。
俺は股間を押さえたまま、足をバタつかせて抵抗する。が、ガッと両の足首を掴まれてしまった。
「ふふふ……パッカーンといくぞ……!」
俺の足を開かせようとしてる……!? 股裂きのような格好をさせるつもりか……!
コイツはレイプ魔かよ……!?
させてたまるかよ……!!
そんな格好を晒すハメになったら、学校どころか、この街にもいられなくなっちまう……!!
でも……どうすりゃいい……!? どうすりゃいいんだ……!?
もう……叫ぶしか……! 最後の叫びをあげるしかできねぇのか……!
足首がググッ、と握りしめられ……こじ開けんばかりに、力が込められた。
トレーニングマシンに向かっているようなサド女は、やり過ぎでハイになっちまったかのような狂った笑顔を浮かべている……!
俺は歯を食いしばって抗う……!
が……古びた鉄扉がギギギギと音をたてて開くかのように、くっつけていたはずの太ももどうしが少しずつ、離されていく……!
も……もう……ダメだ……!
俺は声をかぎりに、叫ぶしかなかった……!
「や……やめろ! やめろっ! やめろっ! やめろっ! やめろぉおぉぉぉぉぉぉーーーーーっ!!」
……バァァァァァァーンッ!!!
俺の断末魔をかき消すかのように、勢いよく開かれた扉。
外から入ってきた土埃が、白煙のように舞い上がる。
扉を両手で押し開いたポーズのまま静止している、ブレザーの小さな人影。
「は……華一っ!?」「リンっ!?」
サド女と俺は、その人物の名を続けざまに呼んだ。
かなり走ってきたのか、リンはしばらくはぁはぁと肩を上下させていたが……やがて、キッとサド女を睨みつけ、
「ボクが、三十郎のかわりに戦うっ!」
勇ましく構えをとる。
映画と同じ、ブルース・リーのファイティングポーズを。
「三十郎を、いじめるやつは……誰であれ、許さないっ!
たとえ、キャプテンでもっ……!」
怒りのオーラを剥き出しにするボクっ子。
俺にとっては救世主……しかしサド女にとっては、目をかけていた部員から牙を剥かれるという状況になっている。
相当なショックを受けているだろうと思ったが、ヤツは黄金の大陸を見つけたマルコポーロのように、興奮と感動に包まれているようだった。
……なんでだよ……!?
全然そんなシチュエーションじゃねぇだろ……!?
「ど……道着に着替えずに、あんな短いスカートでやるというのか……!
更衣室でチラ見するパンティーよりも、スカートの中からチラ見えするパンティーのほうが、千金の価値があるのは自明の理……!」
一瞬聞き間違いかと思ったが、サド女は確かにそうつぶやいた。
途中で俺の視線に気づいたのか、亀仙人のようにだらしなかった顔は、すぐにキリッと引き締まる。
「……この男を叩きのめし、ハーレム同好会を潰えてしまえば、華一も正気に戻ってくれるかと思ったが……どうやら我が手によって、しっかりと引導を渡してやる必要があるようだな」
厳格なオヤジのようなことをぬかしながら、鏡のようにリンと同じ構えをとるサド女。
かかってこいとばかりに、手をクイックイッと曲げていた。
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