他愛もない話

妹の結婚式の写真を見たいと言うので友人にスマホを渡したら、「あーごめん、私こう言うの無理だわ」と謎に謝られた。その写真は東京駅の夜景をバックにバチバチにキメたフォトウェディング写真だったので、恥ずかしくて無理という意味だったのだと推察する。

「いや、謝られても困るんだけど」お前が見たいって言ったんだろ。妹とそして身内の私に失礼だわ。

「あ、ごめん。最近子供の写真とか大量に見せられて、それを可愛いって言わなきゃいけない風潮に嫌になっちゃって」知るか、可愛いって言っとけよ。大人気ないな。



「で、険悪なムードになっちゃったんだよね」

「なんで友達続けてるの?」

「え、だって喧嘩をしても友達は友達だし。言えば分かってくれるし、分かって欲しいって思うじゃん。やっぱ付き合い長いもん」


どうやら君は友情に”共感”を求めないらしい。

「俺、半年とか一年に一回会う友達しかいないんだよね。アップデートを聞いて楽しむような。定期的に会って、愚痴とか悩みとか言い合いとか、思ったこと無い」

確かに君は恋人の私に対してもそうだわ。愚痴とか悩みとか、言われたことない。


「例えば昨日あなたに、バーの接客が酷かったから今度話聞いてってLINEしたけど、コンテンツとして言っただけだから、特に相手がいなければ言わないし、誰かに言いたいとか分かって欲しいとか思わない」

「うへえ、それって人間関係希薄すぎない?」


でもよく考えてみれば、どんなに親しい友人でも、大人になった今は多くて月1でしか会っていない。大学の頃は毎日同じ子と学食でずっと喋ってたのに。なんでなんだろう。昔より強くなったから、他者に共感してもらいたいとは思わなくなったからだろうか。いや、人生の刺激が減ったか感受性が鈍くなったかで、話したいこと自体が少なくなったのか。


「しかし、それでよく恋人とは週1で会ってるよね」

「みやこはアップデート多いんだよ、飽きないね」


お願いだから、恋人をコンテンツとして見ないでくれ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る