第4話 キンデルダイク
黄色い日差しの中で、揺れるチューリップを一輪摘んで眺めていた。こうやって過ごして何時間たったかわからなかった。一度だけ強い風がひゅるりと吹いて、摘んだ花の花びらが一枚めくれて飛んで行ったとき、ふと、考えてしまったことを口に出す。
「ねぇ、ファウスト。パパはどこにいるのかな」
わたしは飛んで行った花びらのほうを見て、その先が空の向こう側に行ってしまったのを見届けた。どこか遠くに行ってしまったパパは順調に夢を叶えられているのだろうか。
「パパからもらったアルバムで一番新しいのはどんな写真だい?」
「雪の写真。今朝見せたやつ。あれが一番新しいのよ」
「そうか」
優しい風はいつまでもわたしとファウストをなでる。あまりにも長い時間あてられていたためママのような優しささえ覚える。
「ひとつだけ、試してみる?」
ファウストの提案にわたしはハテナをひとつ浮かべた。
「うまくいけばパパのもとにひとっとびできるかも」
もし、これでパパが見つからなかったら、あきらめよう。パパだって夢があるみたいだし。そう理由つけて、心でひとつの区切りをつけた。そして諦めるイコール後悔するにならないように、わたしは決意をもってファウストに身を任せた。
目を閉じると白いキラキラのアルバムのページがぱらぱらとめくれていく。わたしの横や前をひらひらと写真が落ちていく。茶色いネガがわたしとファウストを包んで、一つの道を築きあげる。わたしは一歩一歩に力を込めて踏み出し、道の先に見える光に向かって歩き出した。
(続く)
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