記憶

のぎVer.2

記憶

朝が来た…そう思ったのは日光を感じたからで、近くに時計があるわけではない。

体を起こすと真っ白な部屋に居ることに気がつく。壁も、床も、天井も真っ白…家具もない、箱のような殺風景な部屋だった。

なぜここに居るのか全く思い出せない。思い出そうとしても、頭痛がするだけでどうしようもできない。


『ここに来る前はなにをしてたっけ──』


普通の人なら簡単に思い出せそうな事でさえ、今の自分にはできない。

思考は働くし、自分を殴れば殴ったぶんだけ痛みも感じる。時間が経てばそれ相応にお腹も空く…それなのに記憶は全くない。

思いだそうとするだけ無駄だという結論に至る。

特にすることもないので、部屋になにかないか探すことにした。

出入口は小窓だけかと思っていたが、偶然、壁にあるスイッチを押す。

壁が動き出し、ひとつの出口が現れる。

ここから出られると思った。

出たら自分が何者なのかを探そうと心に決めた。

希望と不安を織り交ぜながら部屋を出て、白い通路を歩いて進む…通路の先からは小窓から見えた光と似たものを感じる。

少し気が高まって、光の元へと走り出す。


『これで自由だ。これからは自分の時間を使える!』


そんなことを思えたのも束の間で、すぐに絶望を見ることになる。

それはさっきと同じ部屋。ただひとつ違うのは来た道があるかどうかだけ。


この部屋ではさっきとは比にならないほど必死に出口を探した。また出口があることを信じて…


どれくらいの時間探したかわからない…数十分…数時間…

探しているうちに、ここから出てなにかあるのかを考えるようになってしまう。意味なんてあるのかと。

しかし、ここから出ることを諦めなかった。出ることに意味があると信じて、この先何時間も探し続けた。


…体の限界を迎えた頃に、出口を見つける。よろめく体を必死に支えながら、ゆっくりと歩を進める。


『どうか出口であってくれ。』そう願う気持ちとは反対に、次の部屋につく…

体が限界なだけあって、なにをする気にもならない。

ふと前を向くと、今までの部屋とは違い、ひとつのモニターが置いてある。気力を振り絞って、モニターの前までたどり着く。


書かれていた内容を見て、自分という存在がなにか分からなくなってしまった。

これからどうすれば…そんな気持ちだけが残る、酷い内容だった。


《STAGE2クリアー

今までリセットした回数144回

次の記憶リセットまであと6;13;41


クリアー報酬 質問をひとつする権利》


「どうして…俺はここに…!」

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