第4話 鑑定!鑑定!
「かんてい!!」
手のひらをその植物にかざし、鑑定スキルを使うように意識する。
するとウインドウが小さく展開された。
『ヒメヒシバ草(普通の草)』
…おかしい
何度鑑定しても名前しか出てこないんだけど…
ほ、ほら、こういうのってさ!
詳細がしゅばばばっって出てきて、それが薬草かどうか分かったり、調合の仕方まで載ってたりするんじゃなかったの!?
これじゃ鑑定も役にたたないじゃん!!
諦めきれず、王宮の壁に向かってもう一度鑑定してみる。
「かんてい!」
『白い上等な壁』
ちぃぃぃがぁぁぁうぅぅぅ!!
俺はそんなことがしりたいんじゃなぁぁああい!!
ガクッと壁に手をついてうなだれる。
ちょっ、こんな役立たないスキルだっけ?
鑑定ってラノベじゃチートスキルだよね!?
どうやら鑑定は名前だけが分かるようなモノらしい。
名前忘れたときには助かるけど、ぶっちゃけ役にたたないと思った。
「しょんなぁ~」
あまりにもスキルが使えなさすぎて、悲しいよ…
ため息が出そうになるのを押し殺して、さっき鑑定した雑草達を手にとる。
『ヒメヒシバ草(普通の草)』
『トウダモイ草』
『魔力草』
ヒメヒシバ草は何処にでも生えているような雑草で、ドウダモイ草は鮮やかな黄緑色をした小さな葉が花のようにいくつもくっついたような形だった。
魔力草とか言うファンタジー的な草も入っている。
これはテレビで見たジギタリスのような花をつけていた。葉っぱはなんか違ったけど。
この魔力草とかからマナポーションがつくれたりするのかな?
誰かに聞いたら作り方が分かるかもしれない。
そんなことを考えていると、後ろの茂みからガサガサと音が聞こえた。
何だろうと思い振り返ると、
そこには一人の男が後ろを気にしながら立っていた。
土いじりでもしたのだろうか?
ちょっと汚いよ。
男は後ろを伺いながら移動している所為で、全く俺に気づいていないみたいだ。
ふふふ…
なんかちょっとイタズラしてみたくなちゃったよ。
そうして後ろからそろりと近づいた。
「わっ!!!!」
耳元に大声を流し込む。
「おわぁぁぁああああ!!!!!!」
男は驚愕した表情で驚いている。
うん、満足した!
こんなことが楽しいだなんて、やっぱり俺の頭は幼児化しているようだ。
盛大に変顔を披露してくれた男はこちらを向いて眉をひそめた。
「…お、王宮に子供?」
おかしいな、王宮の使用人達は俺が元勇者だって知っているのに。
この人はもしかしたら、ここ数日家に里帰りしてたのかも。
で、今日帰ってきたということかな?
まあ、どっちにしろ自己紹介しなくちゃね。
「もと、ゆうしゃのなつめゆきとでしゅ! おじさんはだれでしゅか?」
男は俺が元勇者だということに驚きつつ、自己紹介を返してくれた。
「あ、ああ、俺はなぁ~えーと、庭師をしている者だ。ほら、さっきは…この茂みをきれいにしてたんだ。」
ほぅ!庭師ですか!!
それはちょうど良いと思い、さっきの魔力草やトウダモイ草を見せる。
何の効果があるのか知りたいしね。
「え、ああ、この魔力草は魔力回復薬の材料になるんだ花の部分が原材料らしいが、茎の部分は眠り薬に使われることもあるらしい。」
男は薬草の知識があったらしく、詳しく話してくれた。
「しょれじゃあこっちは?」
トウダモイ草を差し出す。
すると、男は少し顔色を変えた。
「これは毒草だ。食べると腹痛になったり下痢したりするやつだな。
ていうかお前、何でこんなもの持ってんだよ?」
普通に草抜いてたら見つけちゃいましたけど。
そう言ったら、男はそれをくれないか?と交渉してきた。魔力草はそれなりにお金になるらしい。
俺には必要ないと思ったので、トウダモイ草を含めて全部あげることにした。
いろいろ教えてくれたしね。
はい!と魔力草とトウダモイ草をを手渡す。
すると向こうの方からエリサが兵士と走ってきた。
エリサの胸はけしからん程に揺れている。
兵士の一人はちらちらと胸をチラ見しまくっていた。
いや、仕事しようよ。
「夏目すまない、ここの近くで不審な男を見かけなかったか?」
俺が勇者ではなくなったことで、エリサは敬語を使うのをやめていた。
え、不審な男?
庭師さんはいたけど、不審な男はいなかったなぁ。
庭師にも心当たりがないか聞こうと思って後ろを振り返る。
けれども
庭師さんはもういなくなっていた。
「逃げられたか……」
エリサがガックリと肩をおとす。
「どうしたんでしゅか?」
「実は盗人が王宮に入ろうとしたところを見つけてな、追っていたんだ。」
へ~
こんな兵士がいるこんな真っ昼間に入って来るなんてバカな奴だなぁ。
エリサは走りまくったことで体が汗ばんでいた。
荒くなっている息遣いに少しだけドキッとする。
エリサは俺をジッと見て言う。
「あ、あのな、夏目。もし良かったらまた撫でてくれないだろうか…」
ほうを赤らめて恥じらうエリサはとても可愛くて、色っぽかった。
「ん、いいでしゅよ」
こんなふうに頼まれちゃたら断れないよ。
優しく頭を撫でてあげる。
エリサはふにゃんとして俺に体重を預けるようにしゃがんだ。
そんなエリサを見て、兵士達はあり得ないという表情をしていることに俺は気づかなかった。
◇◆◇
〈庭師?視点〉
「くそ!!」
暗い路地裏の壁に拳を打ちつける。
今日は失敗してしまった。
あの女騎士さえいなければ金が稼げたのに…
王宮にあるものは全て一級品だ。一つでも盗めれば、一生とは言わないが、10ヶ月は遊んで暮らせるほどの金が手に入る。
そんなお宝を狙うわけじゃないから、楽勝だと踏んでいた。
だが、侵入するところを女騎士に見つかってしまったのだ。
あの女は化け物だと思った。
普通あんなスピードで人は走れないだろ!?
怖ええよ!!
茂みであの女をまけたのは奇跡だった。
命からがら逃げれたのだから。
そういえば変なガキがいたな…
元勇者だと見え透いた嘘をつくガキだった。
勇者っていつの話だよ!
……
いや、まてよ?
そういえば勇者召喚が行われたという噂がたっていたはず。
もし、その噂が本当だというのなら、あのガキを奴隷商に売れば……
「フハハハハハハ」
笑みがこぼれる。
「…まってろよ」
暗い笑みをちらつかせ、男は闇に消えていった。
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