エピローグ4 エリス

「ゆんゆんさん、ようこそ死後の世界へ。あなたはつい先ほど、不幸にも亡くなりました。とても濃い人生でしたが、あなたの生は終わったのです」


 私はハラハラドキドキと先輩を見守る。


 私の知り合いが来た時には教えて!と先輩に言われていたので、教えはしたのだが……


「さて、あなたには二つの選択肢があります」


 先輩が凛々しく告げる。




「一つは人間として生まれ変わり、新たな人生を歩むか。もう一つは天国で暮らすか」


「あ、あの……ちょっと聞いていいですか?」


 ここでようやくゆんゆんさんが、顔を上げて発言する。


 そこには、優しそうなおばあちゃんの顔があった。

 童話などで出てきそうな優しそうなおばあちゃん。

 私も歳をとったら、こんな感じになりたいなと思えるくらい素敵なおばあちゃん。



「素晴らしいおばあちゃんになったのね、ゆんゆん。……で、なに?」


「先輩!? なんでもう砕けた感じになってるんですか!?」


「いいの。知らない仲じゃないんだし。それにあまり畏まってると肩が凝るというか」


 先輩が肩をストレッチするように両手を伸ばしたりする。


 いや、絶対胸のせいでしょう…………女神ってもう成長しないのかな……。



「で、ゆんゆん。なに?」


「その……とある人から聞いたのですが、魔王を討伐したら願い事を叶えてもらえると……。その私も一応魔王討伐メンバーだったので……」


 なるほど、凶悪で残忍な悪魔に何か吹き込まれたのだろう。


「ゆんゆんさん、残念ながら。それは異世界から来た人専用で……」


「いいわ。ここに帰ってきた本来の女神パワーを取り戻した私が、可能な範囲内で叶えてあげるわ」


「先輩!!!!?」



 先輩が光と共に輝き出し、背中に白い光で翼のような物を作る。


 あぁ……。そういえば先輩ってこういう演出をするのが好きだったなぁ……。




「さあ、願いは何? 使い切れないお金と理想の配偶者を得るという条件の元、赤子からやり直す? それとも異世界のぼっちに優しくない日本という国で転生するっていうのも可能よ。さあ、なんでも願いなさい」


 う、うわぁ……。さすがの先輩でも絶対に叶える事ができない願いだ……。


 これ絶対に、私と先輩の二人の女神パワーで願いを叶えるパターンですね。わかります。


 そして、先輩を抑止できなかった私は上に怒られると……はぁ……。




「私を待っている人がいるんです。だから今の世界で赤ちゃんからやり直し……転生させてください。記憶だけ引き継ぎたいんです」


「「え?」」



 え? 記憶だけ? 普通だったらお金とか理想の恋人とか、チートアイテムとか……。


「ね、ねえ、ゆんゆん。もうちょっと何とかできるんだけど……」


「いいえ、先ほどの願いで大丈夫です」


「…………」


 先輩が何かを考え、そして。



「ゆんゆん。あなたの願い確かに聞き届けたわ。さあ、そこの魔法陣の上に乗りなさい」


「ありがとうございます!」


 ゆんゆんさんがよろよろしながら、魔法陣の上に乗る。


「転生後も成長後は同じ姿になるように、そして永遠に同じ条件で転生できるように、ちょっぴりサービスしてあげるわ。あとスキルも引き継ぐようにね。さあ、行くわよ。エリス」


 それちょっぴりじゃないです。




 あっ、そうだった、転生する前に伝えたいことが。


「ゆんゆんさん。あの悪魔との契約はあくまで前回の命までです。転生した後は契約無効なので注意してくださいね」


 永遠の労働力をゲットである。と笑っていた悪魔に少しでも仕返しをしておかなければ。


「あの姑息な雑魚悪魔の事なんて聞いたらダメよ? もし何かあったらすぐにアクシズ教徒に言いなさい。私からゆんゆんが救いを求めたら手伝うように言っておくから」


「はい。アクアさん……エリス様。本当にありがとうございます」


 ゆんゆんさんが笑顔を見せた。


 ……。





 今回はゆんゆんさんの為に頑張ろうと、私は観念して先輩に力を貸す。


 すると先輩が、ゆんゆんさんが行ってしまう前に。





「私の大切な仲間をよろしくね」





 アクア先輩は笑顔でゆんゆんさんを見送った。

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