七章:一年生からやり直しとか正直面倒なんて大胆な方法を取った
「一身上の都合により、フュージョンシティ魔法学校をしばらく休学します。探さないでください。ハーバート・ギャラクシアス」。
部屋の奥にある窓からの月光を直に受けながら、オレは机の紙にこうしたためた。
「現れたな、メガ・コウモリ」
机から見て部屋の左側の壁際に置かれたベッドの上で、ルナda黒ふぢが寝言をこぼしている。最も、寝るとは黒ぶちメガネは外しているんだが。オレは、彼女に寝てもらうまでの凌ぎとして着ていたパジャマから、紺色のローブ付きの制服に戻り、荷物もまとめ終えた。
オレはやれやれとばかりに窓の方に目を向けると、そこにはホウキにまたがり浮遊しているエメラインがいた。
しかも彼女の格好は、従来の薄桃色の裾の長く、ふわふわした王室にふさわしい豪勢なドレスから、胸に白く大きめなリボンをあしらった、赤を基調とした機敏なワンピースを身にまとっていた。後ろ側には、純白のオーバースカートが風と戯れている。この時のお姫様の身成りは、あたかもプロの魔術師であるかのような挑戦的なものだった。
その少女は、王室の令嬢とは思えない、何よりも同一人物とは思えない刺激的な雰囲気をまとっていた。彼女はあのドレスの奥に封印されていたものを解いたかのように、新次元の麗しさをオレに見せてくれた。
何だこの子、果てしなく可愛い、結婚したい。
オレは新しい世界の扉のように、窓を開いた。
「その格好はどうしたんだ?」
「この学校から抜け出すのです。先ほど、あなたはそうおっしゃいましたよね? いかがでしょうか、この衣装は?」
「最高です、尊敬します」
オレが敬語を口にしなきゃいけないほど、エメラインの姿は神々しかった。まあ、元々彼女はお姫様なんですけどね。
「早くしないと、発見されてしまいます」
「そうだったな」
「私があなたをこのホウキに乗せてあげましょう」
そう言いながら彼女はホウキを窓と平行にした。オレは意を決し窓枠に足をかけた。
「あの……肩をお貸し頂いていいですか?」
オレは顔の火照りを感じながら、エメラインから少し目を逸らしながら頼んだ。
「問題ございません」
オレはかさばったリュックを背負いながら、エメラインの肩にそっと手をかけつつホウキに乗り込むと、外から窓を閉じた。
「それでは、出発でございます」
こうしてオレたちは、学校を抜け出した。
これを、「ハーバートのヤツ、一年生に成り下がる現実から逃げたのか」と思うヤツはそう思えばいい。だがそれ以上にオレとエメラインには大切な目的がある。それぞれにとっての尊い存在を取り戻すため、共通の心の底からムカつく野郎どもをブチのめすため、最後にこの世界に秩序を取り戻すためだ。
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