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理科室の机か黒く創(キズ)負えり空のフラスコ落ちて叫べり




階段の夕日満ちくるおりおりに薔薇を思えるその暗き香を




あじさいの七変化のその一日(ひとひ)園児がこわす水のかがみを




シャーペンの一瞬われに抵抗し跳ねて飛びけりつくえのきりぎし




朝たけて気化せよ地上の雨水よ銀輪少女光りくるかも




昼下がりパンのふくろを膨らませ夢の世界にいざなわけるかも




炭酸の抜けたる午(ひる)に暖雨降り味気なきかな窓のしずくは




跳び箱のなかなる闇の羨(とも)しさよ夕日は刺すとも剣にならず




極熱を溶かして高し太陽の午後の窓辺はみな焼けており




爪よ手に桃へのごとくもし立てばわが内奥をやぶるか竹も





うらぎりて日輪おえる長橋におるうれしさよそのさみしさよ





地は廻り空も廻りて音楽室ピアノはいつも誰か待ってる



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ひま短歌 平成にっぷ @katanadausagi

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