ひま短歌

平成にっぷ

くも裂けて風すべりいぬわが身さえ皮膚ある憂さや梅雨やあるらむ



うちつけに衣すずしく覚えるは袖に触れいぬ(冷蔵庫のせいか)



ドアひとつ開いてわたし招き入れなんだかわたし間違ってないか



うつろなる本棚ひとつ夕まぐれ詩集の薔薇を灰にするとき



ぬばたまの未来を知りぬあかつきはくちなし褪せて木乃伊なりけむ



笑えれば笑えばいいさ何事も笑えばなべて事もなかりし



ワックスと香油のあいだ(それが君)手傷を負うて吾れ汗みどろ



風去りて繁みさざめく一瞬の花より洩りぬ銀のしずくや



たそがれの 

ふぃぎゅあのひとみ 

くもらせぬ 

また一日(ひとひ)が終わり

明日もひとりか



朝満ちて聴こえぬ蝉を耳さがすやがて触れくる夏のあつさに



クッションということばが好きなんだなんとも言えぬこの弾力性



鏡台の夕日をみたす香水のほのかににおうわが眠りうた



窓開けて光をまねきて目をくばる白き手紙は夏のまえぶれ



男でも身ごもることがあるというそんなうわさを聞いたか聞かぬか



馬奔るわが腹腔の原野にて諸刃のつるぎに血の蜜したたる

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