第2話
高校を卒業してから、僕は偏差値51の大学へいった。
大学は自由だと、大勢の人が思っているようだ。しかし、それまでのルールが少し変わっただけで、ルール自体はなくなったわけではない。
これまでは、何もかもが目の前に用意されていた。たとえば矢印の看板がある分かれ道があったとしたら、そこから看板を見てどれかの道を選べばよかったわけだ。
しかし今度は自分で情報を得るために動かなければいけなくなった。いわば看板のない分かれ道。しかも、道自体が隠れていて見えないこともある。
正しい道を選べているか?
なにが正しいのかわからないから、みんなが歩いている道を行く。
みんなで歩けば怖くない。
新しいルールを早く覚えた者が勝者だ。
古いルールでプレーを続けていたら、そのうち行き詰る。
僕は歩く。正しく歩く。
だけど、この道は、どこに続いている?
もしかして、とんでもない方向に進んでいるんじゃないか?
ドロップアウトするやつらの噂をちらほらと耳にするようになった。
自由という幻想に酔って、跳びたって、落ちていったやつらだ。
僕は、まだ大丈夫だ。
と、下を見て安心している。
なんてつまらない。
朝から夕方まで、講義室の硬い椅子に座っている。
たいして美味くもない学食を食べている。
言われるままにレポートを書いて、提出している。
週に何回か、倉庫のバイトに入った。
時給は900円。悪くはないが、良くもない。
体はキツいけれど、周りは変に干渉してこない人たちばかりだから気が楽だった。
やることさえやっていれば、ちゃんとバイト代が入ってくる。
これが大人だな、と思った。
ある日、リーダーが変わった。
やり方が変わり、それが気にいらなくてバイトの半分が辞めていった。仕事はもっとキツくなり、雰囲気も悪くなった。
学校を休みたくない僕は、シフトを断ることが増えた。
「たいした大学でもないだろう」
そんなことを言われる。
たぶん、これからも、ずっと言われ続けるんだろう。
うんざりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます