Q7 あなたにとって仕事とは何ですか?

 「どうしたんですタイダ?」

 「ツユか…いや…内定が取れなくて打ちひしがれてる…」

 「内定?」

 「ああ、向こうでは仕事を貰うのは完全にコネだもんな。こっちでは就職するのに書類書いて、面接うけてとかしなきゃ行けないんよ…」

 「うーん一応、宮廷魔術師とかは試験を受けて就職するものらしいけど…」

 「らしいってなんだよ…お前、宮廷魔術師じゃん」

 「いや、私は学院時代からの飛び級推薦なんで…」

 「エリートめ」

 「エリートですが?」

 「ぐぬぬ」


 あれから一月程たち、タイダは未だ内定と言う成果を得られていなかった。

 早いものならもう既に内定を複数もらえているこの時期は5月。

 勝者と敗者別れるこの就活レースにタイダはハッキリと乗り遅れていたのだ。


 「それにしても、タイダは本気でこっちを拠点に置く気なんですねぇ…」

 「いや、どこからどう見ても本気だろ?」

 「そうですか?あんまりに私たちの世界に構ってくれるので、てっきりここでは(まぁ、受かればラッキーかな~)とかかんがえてんのかなぁとか思ってたんですけど…」

 「おもってねぇよ!?」


 タイダの就活の進まない原因、それは端的に言えば彼の性格、気質であった。

 普段は名は体を表さんとばかりに怠惰な彼だが、一度受けたことは責任をもって完遂するまで受け持ってしまうのだ。


 実際、彼は勇者として魔王討伐まで、尽力した。

 しかし、なまじツユの帰還魔法で世界を行来出来るようになってしまったばかりに向こうの世界でタイダは世話をやいてしまう。

 残念なことに異世界の、それも国家規模の問題を解決しながら出来るほど日本国の就活は甘くなかったのであった。


 「それそうとツユ、今度はなんのようで来たのか?」

 「端的に言えば領土内の裁定ですね」

 「またか…」


 裁定、簡単に言えば揉め事の仲裁。

 要はその場に出向いて仲直りしろと言うだけの簡単な仕事にタイダは辟易していた。

 勿論、タイダの勇者としての実績やしがらみのない立場あればこその話なので本来ならばもっと複雑な仕事となるのだ。


 タイダはツユから資料を受けとるとあることに気づいた。


 「あれ?これってA4のコピー用紙じゃねーか?」

 「タイダ、これは勅命によって入手した貴重な紙でして…」

 「いや、お前が100均で買ってんの見てたし、流石に出所がお前だってことぐらい分かるわ!」


 そう、突っ込みを入れつつもタイダはこの世界とあちらの世界の技術格差について思考を巡らせた。


  あちらの世界はまさにありがちといったようなファンタジーの世界で、科学の発展具合で言えば天と地ほどの差がある。

 お節介なタイダは前の結婚式で自身の故郷であるこの日本の政府とコンタクトを図りたがっている王様を思い出しながら


 (こりぁ、なんか下手なことが起こる前に助言のひとつぐらいは入れといた方が良さそうだな…)

 と更なる就活の遠回りの道をを無意識に選ぶのだった。

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