Q5 最近仕事以外で関心のあるニュースは?

 数日後、エントリーシートを書いているタイダの元へ現れたのは意外な人物だった。

 タイダの家のドアが勢いよく開かれる。


 「タイダ、私結婚します!!」

 「うぉ!?かま…カムエッテ王女!?どうしてここに!?」

 「そんな事はどうでもよいのです!それより結婚するのですよ!?私!!」

 「えーっと…おめでとうございます?」

 「ありがとうございます!!それで、私と誰が結婚するかお分かりになります…?」

 (え?うちのパーティメンバーのキシじゃねーの?)


 タイダは余りに蜜月を過ごしていた二人だったのでむしろそれ以外に考えられるのかと、怪訝な顔を横に居るツユに目線を送った。

 ツユは「はい、あってますよ」と明らかに疲れた顔を見せながら目で返答をした。


 「恐れながら。魔王討伐時のうちのパーティーメンバーであった戦士のキシでしょうか?」

 「そうなのですよ!このたび、魔王討伐の功績によって貴族に叙勲したキシ=ハンサムガイ様と結婚する事になりましたの!!」

 「それはよかったです!あのキシと!…え?ハンサムガイ?」

 「あ、家名に気付いてしまわれたのですねっ!そうですわ!新たにキシさまはハンサムガイ男爵家を立て、私を向かえて下さったのですわ!!」


 タイダは目を白黒させてツユの方に目を向けた。

 ツユは既にあきらめの境地に達していたようで、力なく首を振るのみであった。


 そう、この「ハンサムガイ」は所謂パーティメンバー達のキシへのあだ名…いや、むしろからかいを含んだニックネームだったのだ。

 しかし、当人にはそのニュアンスがまったく伝わっていなかったようだった。

 喜々としてタイダから伝わった外来語である「ハンサムガイ」を自らの家名にしているのがその証拠であった。


 (まぁ、あいつは人の言葉の裏を読まない人間だったからなぁ…)


 脈々と受け継がれていくハンサムガイの血統…という恐ろしい語感を生み出してしまった事にタイダは背筋の凍る思いを覚えつつも何とか自身を取り繕う。


 「キシは男爵家を立てられたのですね。それはよかったです。して、結婚式はいつになるのでしょうか?」

 「明日ですわ!」

 「ブホッ!あ、明日ですか…?」

 「善は急げと申しますものね!ツユとも話しておりましたし!」


  タイダはじろりとツユを睨むが、ツユは勢いよくその首と掌を横に振っている。

 まあ、何時ものごとく振り回されたのだろうとタイダは諦めてツユを睨むのを止めた。


 (明日、説明会だったんだけどなぁ…)

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