Q2 ご自身の長所と短所を教えてください
「お前って掃除、へったくそなのな」
「いや!?そーじき?とか意味わかんないし!?あと、ダイキの部屋、狭すぎますし!」
8畳のワン・ルームのアパート。大学生の一人暮らしでは標準的であるこの部屋を二人は掃除していた。
とはいっても異世界から着たばかりの少女はいくら賢くても見た事のないさまざまな現代文明の利器に戸惑いを隠せない。
掃除以前の話になるのは当然の事だった。
「とりあえず、アパートが引き払われてなくてよかったよ…」
「まぁ、召喚魔法では召喚する人物がいなくなっても気にならなくなる認識阻害の魔法が組み込まれてますからね。
こちらに戻る時に解除される脆いものですが、戻ってこなければそのままいるけどいなかった事になるので誰もここを引き払おうともしないんですよ」
「…あの魔法、やっぱり物騒なものだったんだな…」
「そりゃ物騒でしょ…一方的に相手を拉致してくる魔法なんだよ?なんかあるに決まってるじゃない」
「そうだなぁ…そもそも魔法が発動しきってたら俺、勇者どころか今頃操り人形かなんかだったもんなぁ…」
タイダは「召喚」の魔法で異世界に召喚された。
通常、この魔法は同じ世界に住む魔物を使役するためのものらしく、先の認識阻害などの魔法が合わさっているのは拉致問題による魔物のスタンピードを起こさない配慮によるものなのだ。
魔物を召喚する関係でその後、「使役」の魔法が続けて掛かるものらしいのだが召喚者が人間だったために、中途半端な召喚魔法となっていたのだ。
「そうならなかったのは、ずばり私のお陰なんですけどね!」
「そもそもそういう事態になりそうだったのはお前のせいが8割なんですけどね?」
「謝罪しかできねぇっす…」
軽口に合わせて軽口を叩く。
こういったやり取りはことこの二人にとって最早日常のようなものになっていた。
なにせ、既に半年だ。
魔王討伐という目標を達成するには些細ないざこざなど流してしまわねば到底達成できるものではないのだ。
それに、こうして元いた世界に帰っている今だからこその軽口だ。
それは、二人は理解していた。
タイダは先ほどまで談笑しながらしていた掃除の手を一旦終えるとツユに声を掛けた。
「っし!一旦これで掃除は終わりだな!ツユ、昼飯にしようぜ!この世界でなんか食いたい物ってあるか?」
「タイダ、私はラーメンが食べたいです!
ラーメンを語るタイダが詩人になるほどの味。ずっと気になってたんですよ!」
「ぅぉおおうけぇぇえい…ラーメン、ラーメンだな?最高の奴を食わせてやるぜ!!」
今からいくラーメンに並々ならぬ情熱を向けるタイダに若干の戦慄を覚える大賢者ツユ。
しかし、間違っていたのは自分だと気付くのはそう遠くない未来の事だった。
そう、それは彼女がタイダの勧める至高の鶏ガラ醤油ラーメンのスープを口に含むその時だった。
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