エピローグ

貴彦くんが私から反応しなくなって2週間が経った。季節は7月下旬、少し前に梅雨明けが発表され、学生は夏休みに入った。




私はその日たまたま休日が取れたため、東京近郊の小さな墓地を訪れた。その墓地には貴彦くんが眠る墓がある。私は千鶴さんと千歳ちゃん、そして真鍋先生の娘さんである結衣ちゃんと貴彦くんの同級生だった白石梨沙ちゃんとともにこの墓を訪れた。


今日は貴彦くんの月命日。貴彦くんが亡くなってから2ヶ月が経ったという。




私たち5人は貴彦くんの墓前に立った。私はこの2週間で起きたことを報告した。きっと貴彦くんはこの墓の中にいるんだと思ったから。そして梨沙ちゃんはこう言った。




「浅井貴彦くん。実は私、あなたのことがずっと好きでした・・・いや、これからもずっと大好きです!貴方以上の男性はいません!私も暇な時は浅井くんのところに行くから、これからもずっと、私のことを見守ってください」




梨沙ちゃん、やっぱ貴彦くんのこと好きだったんだ・・・そして私は梨沙ちゃんに続いてこう言った。




「浅井貴彦くん。実は私、あなたのことが好きです。男性として、そして世界中の誰よりも。私も暇な時はできる限り貴彦くんのところに行くから、これからもずっと、私のことを見守ってください」




・・・私は貴彦くんがいなくなってやっと気がついた。私は貴彦くんが好きだったんだんだってことに。そして千歳ちゃんは、


「優奈さんって、お兄ちゃんのことが好きだったんだんですか?」


と言い、私は


「・・・うん。そうみたい」


と言う。梨沙ちゃんは、


「優奈さんも浅井くんのことが好きだったんだんですね・・・」


と言った。そして私と梨沙ちゃんの発した言葉に唖然とする千鶴さん・千歳ちゃん・結衣ちゃん。千歳ちゃんはまだ私にこう言ってくれたけど、あとの2人は完全に蚊帳の外だ。千鶴さんも何か言ってくださいよ。そして千鶴さんは、


「まぁ、2人とも貴彦のことが好きだったんだね。貴彦もこれからどっち選ぶか悩み始めるんじゃないかな~」


と言い、結衣ちゃんは、


「きっと2人の恋は本物ですよ」


と言った。




お墓参りを済ませると、私達は横浜に向かった。そこで部活を終えたばかりの優梨花が合流し、近所のレストランで昼食を食べた。昼食中はただの女子会になっていた。ガールズトークの絶えない昼食だった。結衣ちゃんとはこの日が初対面だったけど、私達6人はもう友達といってもいい関係なのかもしれない。


そして昼食後解散し、各自それぞれ帰路についた。私も優梨花とともに実家に戻った。実家に戻るとお母さんが、


「優奈、また実家戻っちゃったの?あんた最近、休みの度に実家に戻っている気がするんだけど。優梨花も部活午前中だけでしょ?もしかして昼食べた?」


と言っていた。優梨花の話は図星だ。さすが我が母親。私は午前中、墓参りに行ってたことをお母さんに言った。するとお母さんは、


「まさかあんたの知り合いに亡くなっていた人がいたとはね・・・」


と言った。まぁ、それ以上の詳しいことは言わなかったが。




そして夕方、私はお母さんから今日の夕食が入った弁当を貰い帰宅した。夕食中、私はふと思った。


これから先、どんなに寝てそして起きても、貴彦くんがもう私の中に現れることは多分もうないんだいうこと。そして、貴彦くんがもうこの世界のどこにもいないんだってこと。私はそんなことを考えながら昼食を食べ終え、風呂に入る準備をした。


風呂の中では、貴彦くんのいない日常は始まったばかりだということや、どこかで貴彦くんが私のことを見ているんだってことに気づき、そして色々と考えていた。


風呂から上がり、私は寝る準備をした。そして私は寝る前に、こう叫んだ。




「貴彦くん。私、あなたのことが好きです!男性として、そして世界中の誰よりも。これからも私のことをずっと見守ってください!」




すると、




「ありがとう優奈さん。俺も優奈さんが大好きだよ。ずっと一緒にいよう」




という貴彦くんの声が聞こえたような気がした。

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冴えない高校生が美少女アイドルになっていた件 青獅子 @bluelion

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