俺のペットは神様です 何かの2

ポムサイ

俺のペットは神様です

 神様はいると思うか?そんな問いで戦争だって起きるんだから人類永遠の課題だろう。

だが俺は声を大にして言いたい。いや、実際にはおかしくなったと思われたくないから言わないけど。神様はいる。俺のタンスの下から2番目の引き出しに。


 結婚した時に買ったタンスの下から2番目の引き出しに俺はパンツと靴下を入れていた。

 ある日の風呂上がり、脱衣場にパンツを持っていくのを忘れて下半身フリースタイルで引き出しを開けた。そこには拳ほどの大きさのじいさんと綺麗な女の人がこちらを見て立っていた。

 2人は自分達は神だと名乗り、誤って天界から落ちてしまったのだと言った。天界に戻るだけの力が溜まるまでここに居させて欲しいと頼まれたが、家には猫が2匹もいるので飼えないと伝えると願いを1つ叶えてやるからと言われたので置いてやることにした。そしてパンツを取りたいからちょっと端にどいてくれと願いを1つ叶えてもらい、パンツを履いた。

 天界に帰る力が溜まるのにどのくらい掛かるのか聞いてみると「3~5日掛かる」と答えたので「神様ならはっきりとしろ」と叱ると「じゃあ5日で」と余裕を持たれてしまった。

 「2人は家族や恋人なのか?」と聞くと「違う」と言うので男女同じ部屋はまずいだろうと思い、段ボールで引き出しに仕切りを作ってやった。じいさんをパンツの方に女性を靴下の方に住まわせる事にする。じいさんは不満そうだったが「女性を男のパンツの所には住まわす訳にはいかないだろう?」と説得すると渋々諦めたようだ。


 妻が帰ってきたので神様を飼う事になった事を伝えると、「猫が2匹もいるのに何で勝手に決めちゃうの!!」と怒られた。5日だけだからと説得しても怒りはおさまらず、神様は何を食べるのか聞いてきた。俺はタンスを開けてパンツの神様に聞いてみた。「何も食べない」と言うので妻に伝えると、なら飼っても良いと許可が出た。


 飼って3日が経った。じいさんの神様はたまにフラフラ出歩き、猫に襲われていた。

 さすが神様らしく猫を軽々とあしらっていたので「さすがだな」と誉めてやると、「当然だ」と偉そうに言うのでイラッとした。良く見ると服が猫にやられて破けていたが、指摘するとじいさんのプライドが傷付くかも知れないと思い、見なかったことにする。

 女性の神様は余り姿を見せない。傷んだ靴下は恥ずかしいので捨て、新しいちょっとオシャレな靴下を買った。妻に「色気付きやがって」と罵られたので腹が立って「ごめんなさい」と言ってやった。

 なかなかない機会なので神様とはどんな存在なのか聞いてみた。「見守る存在だ」と言ったので「暇だな」と返した。


 5日経ったが帰る気配がまだない。

 1枚のパンツが四角く切られてるのを発見した。じいさんの神様を見ると猫に破られた服がパンツと同じ柄で補修されていた。どういう事だと説教をしたが悪びれないので洗っていないパンツを引き出しに突っ込んだ。妻にグーで殴られた。


 7日目の朝、タンスが金色に輝いていた。引き出しを開けると2人が眩しいほど光っている。天界に帰る力が溜まったと告げゆっくりと空に帰って行く。途中「ありがとう。いつも見守っているぞ」と言ったので「プライベートがなくなるから見るな」と返した。


 かくして、神様のいない生活が帰ってきた。タンスの中の段ボールの仕切りを片付けた時、小さな光る玉が転がっているのを見つけた。手に取ると「世話になったから、もう1つだけ願いを叶えてやろう。この玉に願え。」と頭の中で声が響いた。俺は切り抜かれたパンツを元に戻した。

そして、何だか両膝が痒いなと思いパンツを履いた。


 

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