第218話 ひと冬

「長い入院になったね」

『彼女さん』長期入院中である。

「かなりね、まるで、ひと冬を本気ですべて病院だよね」


 まるでじゃなくて、事実なのだ。

 例える必要も比較するまでもない。

 ワンシーズン入院しているのだ。

 春一番も吹いているのに…

「ストレス溜まるね」

「かなりね、上げ膳据え膳だけど、どこかつらいよね」


(上げ膳据え膳って…久しぶりに聞いたな)

 あまり使われないような言葉を発するほど嫌気が差しているのかもしれない。


『上げ膳据え膳』

 身の回りの世話を全て誰かがやってくれて自分では何もしなくてもよい状態。

 確かに入院とは、そういうものかもしれない。

『至れり尽くせり』

 とは、また違う状況なのだろう。


 早く退院してくれないかな~。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る