第188話 忘れてりゃいいのに

「枝豆と…」

 彼女さんと居酒屋で食事である。

「枝豆、最後の2袋持ってきて」

(やっと冷凍庫が空く)

「冷凍、枝豆…あるじゃん」

「今、食べたい、それに冷凍美味しくない」

(なら、なぜ、あれほど大量に?冷凍枝豆を…)


「あっ、枝豆…地場産枝豆があるよ、コレどっち?」

「いや…ただの枝豆じゃないの? 地場産で注文してないんだから」

「食べ比べる」

「あっ…そう」

「すいませ~ん、この枝豆って地場産ですか?」

 店員さんに確認する『彼女さん』

「はい、地場産です」

「そうなんだ…じゃあ、もうひとつ追加で」

(食べるんだ)


 なんだろう…枝豆食い慣れてるというか、異様に喰うの早ぇな。

「たまごやき~…かつ丼…はい、食べて」

(やっぱり、一口しか食べないんだな)

「あっ…納豆にネギのってるよ‼ いらないのに」

 と言いながら食ってる…。

「あのさ…ただの納豆なんて目の前のスーパーで買えば? 同じ金額で6個は買えるんだけど」

「今、食べたい」


「桜雪ちゃん、ねぎまって何?」

「焼き鳥だよ…鶏肉とネギの」

「じゃあ、ソレ」

(納豆にネギ乗っかってるって嫌がってたじゃん)

「あと…鶏カラ」

(鳥ばっか…)

「食べれるの? 僕、かつ丼と卵焼きで、もう食べれそうにないんだけど?」

「食べるよ」

 ねぎまが2串運ばれ…1串は食べた。

「食べれば…冷めると美味しくないよ」

『彼女さん』にねぎまを勧める。

「もう食べたよ~、後は桜雪ちゃんのだよ」

 よく見れば…ひと噛みしてある。

 そう…ひと噛み、角をチョコンと…。

「あのね…ゴキブリでも、もうちょっと食うよ…食べないなら頼まなきゃいいじゃない」

「食べてるよ~」

「今度はバイキングにしよう、そしたら好きなものをちょっとだけ食べればいいじゃない」

「嫌だ…バイキング不味い」

「桜雪ちゃん、鶏カラ、こないね」

(店側が忘れてりゃいいのに…)


「お待たせしました、鶏カラです」

(来ちゃったよ…)

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