第150話 話聞いてた?
1日だけのアルバイト、花火の日、渋滞に巻き込まれてAポイントからBポイントまでの移動時間を秒単位で測るというアルバイトだ。
説明会もあり、日給もいい。
昨年もやったのだが、今年もやることにした。
当日、僕に話しかけてくる男がいた。
「僕と同じルートですか?」
「そうみたいですね…」
複数のルートが指定されており、20時~25時まで5回、指定された経路を往復するのだ。
複数名体勢で、僕は3回 彼は2回、車で往復する。
「あなたが先に行くんですね、じゃあ、戻ってきたら私が出発すればいいんですよね?」
「いえ…違いますよ、僕が戻らなくても指定時間になったら、あなたも出るんですよ」
「えっ? そうなんですか?」
「はい、同じルートだというだけで、別行動ですから」
「へぇ~そうなんだ、ありがとうございます」
「いえ…」
研修を受けただろ…僕の前にいたじゃねぇかオマエ…。
とりあえず3回走って、バイト代を貰いに行くと、僕より1時間前に終了している彼が話しかけてきた。
「おつかれさまです」
「ご苦労さまです」
「混んでましたか?」
「いえ、インターの入口だけでしたね」
「ですよね~私、混んでるの解ってたんで、迂回路走って往復しましたよ」
「えっ?」
「あの辺、私、詳しんですよ、混むの解っていたんで空いてる裏道走ってきました」
「そうですか…渋滞の調査ですよ…」
(バカだ…毎年数名はいるタイプのバカだ)
指定されたルートを故意に外れてはならないのだ。
というか渋滞の調査なんだから渋滞を避けてどうする。
走行車線すら指定されているのに…ルート外れてどうする?
研修で繰り返し言われただろう…
早く帰ってくればいいんじゃないんだよ。
GPSで管理しているので、後日報告の際にバレるのだ。
当然、バイト代は回収されるのであろう…。
研修でも言っていた。
「毎年、必ず、数名は適当な時間を報告する人と指定ルートを守らない人がいます、その場合、後日GPSデータで解りますので当日お支払するバイト代、ガソリン代は回収させていただきますのでその旨を了承し誓約書にサインをお願いします…」
バカって、こんなバイトもできないんだな。
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