第123話 もぐらな…

「あ~、深いな…オマエらしいというか…考えさせられるものがあるよ」

「そうか」

「桜雪、オマエは浮き沈みが激しいんだ、人生も性格も」


 久しぶりの『通』である。

「下へ…ね…」

 僕の書いた『土竜』を読んだのだ。

「つちりゅうか…」

「もぐら…な」

「もぐら…土に竜で?もぐらなんだ」

(知らんのかい!!)

 エリート農家の長男よ、もぐらには僕より接する機会が多いだろうに…。


「もぐらってさ、野菜食うんだわ、ホント迷惑なわけ」

「そうじゃねぇんだ…ソコじゃねぇんだ…」

「あの生き物、ホント迷惑!!」


 農家にとって、もぐらは迷惑であるらしい。


「オマエはさ、考えすぎなんだよ、オマエみたいの、いっぱいいるんだよ、ギリギリでも食べていけるんだろ、それでいいんだよ、今は、そういう時期なんだと思え」


『通』に励まされるとはね…。


「で?」

「ん?」

「この土竜…って、どういうこと書いたの?」

「ん?」

「もぐらって下へ下へ行かないぜ、横に動くぜアイツ、行き過ぎたら死んじゃわね? 窒息すんじゃね?」

「うん…そうだな…」

「オマエ、もぐらの事知らないのに、もぐらの事書くなよ、今度は俺に相談しろ、教えてやる、なんなら見せてやる、生もぐら」

「あぁ…うん…いや、生もぐらは見たくない」


『通』に感じろというのは無理らしい。

 かといって考えることもしない。

 Don't think、Don't feel…

 考えるな!! 感じるな!!


 それが『通』だ。



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