第107話 別に引かれはしないんだよ

「煮タマゴおにぎり買ったんです」

 20歳のバイトの娘。

「食べれば、ヒマなうちに」

「今はいいです、そもそもなんで買ったんだろう?」

「嫌いなの?」

「好きですよタマゴ」

「あっ、じゃあコレあげる」

「タマゴスープ、どうしたんです?」

「客の忘れ物、僕、タマゴスープ飲まないから」

「桜雪さんって、食事摂らないですよね」

「うん、腹減らないんだ昔から」

「何時間食べてないんですか?」

「かれこれ、18時間は何も食べてない」

「よく動けますね、私無理です」

「非効率なんだな、ところで成人式、ダイエットどうなった?」

「見てのとおりです失敗しました」

「あっそう」


「結局食べるんだ、煮タマゴおにぎり」

「食べます」

「スープも飲めば?」

「ダメです、タマゴ被っちゃう、あとで飲みます」

「べつにソレは関係ないだろ、後で喰っても摂取量が変わるわけではないしね」

「変わらないんですか?」

「同時に喰ったら足し算で、時間が経てば、その分引かれるとでも?」

「違うんですか?」

「だからダイエット失敗するんだよ」

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