第108話 やっぱりカレーなんだ
「今日は、お前との思い出の地に行こうと思う」
『通』とドライブである。
45歳になり、おっさん2人でドライブとはね…恐れ入るよ…。
「いや~楽しいな、思い出を巡るんだ」
2つ離れた市、『通』と寮で暮らした半年、僕にとっては8年も暮らした地でもある。
「ロクな思い出がネェ…当時付き合っていた彼女に申し訳ないことをしたという後悔と寂しさしか湧かネェ…帰りたい」
到着すると、大分変ったものだ。
店が増え、当時通った店は無くなっている。
「『どさんこ』行こうぜ」
「えっ?まさかのココまで来て、ラーメン屋?しかもチェーン店?」
「カレーが喰いたい」
「ラーメンじゃねぇんだ?」
「カレーが喰いたい」
「アソコに専門店あるけど、あえてスルーしてラーメン屋のカレー喰うの?」
「そう」
「まだ潰れてないといいけどね…」
潰れてませんでした…チッ。
『通』はカレーセットを頼んで喰ってました。
「みそバターコーン食べるとさ、子供の頃思い出すの俺」
私の両親はパチンコで勝つと夜、『どさんこ』でラーメンを食べさせてくれたのだ。
私は、いつも、みそバターコーンを食べていた、寂しい思い出だ。
その後も、当時の寮の跡地へ行ったり、ウロウロしたわけだが、悲しい思いでしか湧いてこない。
「ホントに悲しい気分にしかならない…帰りたい」
「わかったよ、でも最後にアソコのアダルトショップ寄ってからな」
「アソコにアダルトショップなんかなかった…アソコは子供の玩具屋さんだった…
時と共に大人の玩具屋さんになるなんて悲しいな…成長したとでも言いたいんかな」
「早く行こうぜ」
「俺、興味ない…勝手に行ってきて」
『通』は、どの地でもアダルトショップに寄るんだな…そして、どこ行ってもカレー喰うんだな…。
私は隣にあったはずのコンビニの跡地で、当時の彼女が『プーシャン』と名付けて餌付けしていた野良ネコのことを思い出していた。
いつも「プーッ」と怒っていた野良ネコと彼女のことを…。
(もう泣きそう…)
「エロ本買ってきたわ」
(ホントに思い出を汚さないでほしい…ホント泣きそう)
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