第106話 結婚したい

「結婚したいんです」

 20歳のバイトの娘。


「すればいいじゃない」

「相手がいないんです」

「致命的だね」

「恋の病とかかかってみたいんです」

「恋も縁遠そうだけど…キミ、病気もしなそうだよね」

「健康なんです」

「良かったね」

「もう、恋なんて時間がもったいないから、すぐ結婚したいんです」

「はぁ、タイプはどんなのがいいの?」

「あんまりないんですけど、話が出来る人がいいですね」

「うん、大抵の場合、話下手は恋に縁がないよね」

「なんかこう、甘やかされたいんです」

「そうなの」

「バイトでも、皆、お風呂掃除はいいよって言ってくれるんです」

「充分、甘やかされてるね」

「そうなんです、甘やかしてくるんです私を皆私をダメにしていきますよ」

「それが嫌なら、いや掃除入りますって言わないの?」

「言いません、最近、ほとんど風呂掃除してないです」

「バイト失格だな」


「ふたご座でAB型なんですよ」

「2重人格、ど真ん中だね」

「そうなんです、だから私、難しんですよ、付き合うにしても」

「うん、面倒くさそうだね」

「なんかいいタイミングで、甘やかされたいんですけど、ダメなときはダメなんですよ」

「可愛いね、とか言って欲しいの?」

「そうなんです、何してても言って欲しいんですよ~」

「今、可愛いね~とか言われたいの?」

「今は疲れてるんでいいです、言われたらイラッとします」

「面倒くさいね~次の部屋行くよ」

「はい」


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