第45話 『通』その1

「いよぉ~久しぶりだ、どうした?」

「いや…どうしたはこっちのセリフだ、連絡付かなかったが、どうした?」

「ん…特に…なにがあったわけでもないんだが」

「それならいい」


 妹から『通』さん家の米買ってきてと頼まれたので連絡したのだ。


 ついでに野菜なぞも頂いて…いつもありがとうございます。

 美味しく頂いてます。


「よし、とりあえずメシ食い行こうぜ、何がいい?」

「うん…なんか暑いし、サッパリしたものがいい」

「そうか、長崎ちゃんぽんとか食うか?」

「サッパリしたものがいい」

「あとは、ラーメンか~」

(俺の話、聞いてない…)

「よし、うどんにしよ」

「なんでもいいよ」


(ここかー…20年ぶりくらいかな…微妙に不味い寄りなんだよな~)

「おっ!! 桜雪、ディナー割引だって」

「そうか…うん…よしソレでいい」

「だよな、で?何食べる?」

「ん?いや割引のソレでいい」

「種類があるの…焼肉とかトンカツとかあるの」

「じゃあ焼肉でいい…冷たいうどんで」

「おう、俺何にしようかな…オマエ焼肉取っちゃったからな~」

「べつに食いたきゃ焼肉2つでいいじゃねぇか」

「なんかな…オマエがいいならそうするか」

「なんだよ…その無駄な気遣い…」


「俺、結局、フリーの記者やることになったよ…空いた時間でラブホのバイト」

「いいじゃねぇか、楽しそうで」

「楽しくは無いぞ…」

「いくらくらいになるんだ?記者は10万+歩合で、ラブホは8万~10万くらいかな」

「大丈夫だろ、俺は手取り8万で、残業すれば10万くらいだ」

「お前は大丈夫じゃなさそうだな…」

「全然、大丈夫だよ」

(やべぇだろ…手取り8万って…ヤバイレベルだろ…)


「奢るぜ」

「いいの?」

「おう」


 なんだろう…素直に喜べない。


「エロ本買いに行こうぜ」

「俺、帰りたいんだが…」

「付き合えよ」

「なんでだよ…44歳になってエロ本買いに付き合えって…どうよ?」

「コレ、この間買ったの」

 風俗情報紙を僕に差し出した。

「うん…いらない…」

「なんで?」

「えっ?用事ないし…他県のだし…」

「そうなんだよな~金沢なんだよな~200円もしたのに」

「200円?…980円じゃないの?」

「ん…中古で買ったから」


 風俗情報紙って中古とかあるんだ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る