第6話

あたしに友達は一人もいない。理由はあたしが極度の緊張体質で赤面症だからだった。お姉ちゃん以外の人間に話しかけられると、たちまち心拍数が上がり、身体が熱くなって動かなくなって、ネガティブな妄想が駆け巡り、喉がきゅーっと萎んで声が出なくなってしまうのだ。

 誰かに不意に話しかけられたりしたものなら、「アババババ」ってな感じで完全に挙動不審に陥る。

 もちろん、高校に進学してから早半年。そんなあたしの特性は教室中のクラスメイトに知れ渡り、誰も話し掛けてなんて来てくれない。他にちゃんと楽しい話が出来る人間がいるのに、わざわざ会話が成立しない奴を選ぶ素っ頓狂な奴はいないのだ。

 登校する間、学校が近づくにつれて、あたしの周りで「おはようー」や、「昨日のあれ観た?」などの会話が多くなっていく。

 あたしは下を向いて、ずっと黙ったまま、早足で学校正門に向って歩く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る