第4話

「ああ~。良く寝た」

 朝だった。目が醒めたあたしは自分の部屋を出る。

「おはよう」

 リビングに戻ると、お姉ちゃんの声がした。「火星はどうだった?」

「うん、また問題があってさ」

 火星から帰って来たあたしは話を切り出す。リビングに入ると、すでに食卓には朝ご飯が並んでいた。豚肉のしょうが焼きと、レタスサラダ、あとはご飯とみそ汁だった。あたしは腰掛けながら話を続ける。「お妃候補が二人か居てね、まあどちらにしようか迷ってる状態なんだよね」

「そう」

 お姉ちゃんはエプロンを外して、キッチンで手を洗っている。「火星の宰相も大変ね」

 彼女は手を洗い終えると冷蔵庫から梅酒と牛乳を出してテーブルに置く。梅酒はお姉ちゃん自身、牛乳はあたしの為だった。

「望んでやってるわけじゃないんだけどね。てか朝から飲むの?」

「昨日徹夜だから晩酌みたいなもん。まあ良い経験じゃない。夢とはいえ」

 お姉ちゃんは梅酒をグラスに注いでいく。あたしも牛乳をコップに目一杯入れてやる。

「それじゃ今日も一日、お疲れー」と、お姉ちゃん。

「あたしこれから始まるんだけど――」

 あたしたちのグラスが甲高い音を立てる。

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