第3話
「お、美紀じゃないか」
王宮から地球に帰る途中、ニョルニョルに見つかった。長い廊下で、ラジコンをして遊んでいる。放蕩息子とかそういう言葉がぴったりの男だった。「ラジコンしていくか?」
「してかない」と、あたし。
「冷たいな」
あたしの足元をニョルニョルに操作されたラジコンが旋回する。
「これ邪魔なんだけど」
「邪魔してるんだ。気づいてなかったのか?」
ラジコンのモーター音が廊下に響き渡っていた。
「馬鹿」
「余は馬でも鹿でもない。それで余の嫁は決まったか?」
「まだよ」
「美紀を持ってしてもか」
「そもそもあんたが頼りないから、あたしがこの星の宰相やってるんでしょうが」
「なかなか面白いだろう?」
「なんで他人事なのよ」
「はっはっは」
笑い方だけは王様然としている。「ところで、美紀は許嫁はいるのか?」
「そんなのいないわよ。友達だって一人もいやしないんだから、あたし」
堂々と宣言してやった。
「余と同じだな」
操作しているラジコンに視線を走らせながらニョルニョルはいった。「余も王様だから友達が一人もいない。もちろん自由恋愛なんてものもない。はっはっは」
「何がおかしいの?」
「美紀だってわかるだろ? 悲しさを通り越して笑いたくなる感じが」
「まあね」
確かに、あまりにも友達がいないので最近ではそんな自分がおかしく感じることもある。
「嫁選び、よろしく頼むよ」
ニョルニョルのラジコンが壁に激突して裏返った。
「あ、そういえば、あんた、嫁候補二人の資料持ってる? 忘れてきちゃって」
さっき部屋に戻ったときは、なんだか気まずくてそのまま「すいません」とポポコさんに言い、扉を反射的に閉めて出てきてしまっていた。なので結局、忘れたままだった。
「余の部屋に確かあったな」
「ちょっと取り行っていい?」
「ポポコに貰ってなかったのか?」
「いいじゃない。早く。持ってきなさいよ」
「王様使いのあり宰相だ。メディア持ってるか?」
「えっと、USBでいい?」
「ああ」
あたしは鞄からUSBメモリを取り出し、ニョルニョルに向って投げる。
「おお! 投げるなよ」
イケメンで痩せているのに運動神経が悪いニョルニョルは、投げられたUSBをうまくキャッチすることが出来ないどころか、反射的に目を瞑ってしまって、それを床に落とす。「全く、地球の女は野蛮だ。一体、未来の地球とはどんなになってるんだ。全員がこうなのか?」
ぼやきながら彼は落ちたUSBメモリを拾うと、「ちょっと待ってろ」と言い残して自室に消えていった。
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