第48話囚われた芸人編⑨

結局このオッサンは、

( この回より、商店会長からオッサンに呼び方が変わります。詳しくは前回にて)

話を盛って人を集め動かしていたのだ。


羽振り良くないくせに、

「⚫県まで本を売りに来ませんか?交通費と食事代は全部もちますから」

と、僕にオファーをかけ、


カラオケバーの店長には、

「本を出した芸人がおる。これから売れるから、お店に来るようにしろ。ライターも作った方がいい。」

と、たきつけ、


「商店会をあげて、君を応援していく!」

と、大きな組織に見せかけ、


それによって自分がお金を出さずに、ライターと赤いジャケット、そしてホイホイついてくる芸人を⚫県に、無料同然で呼びつけ、


「大阪では有名な原田おさむ」

と、⚫県で本を売る手伝いをし、僕に恩を植え付ける。


そして友達が5000人いるFacebookで、会や自分の宣伝をさせ、

いずれは出版社にもコネをつくらせる!


すべての謎のパーツが出そろった!

しかし、愚かなのはそれに踊らされた、カラオケバーの店長と、僕である。

それらはあくまで、

「こっちが勝手にそう思った。」であるからだ。あくまでこのオッサンは、人と人を繋いでいるだけ。


さらに面倒くさい事に、このオッサンと僕は商店街の飲食店を本を売りに回る事になっている!


本物の商店会長であれば、

「俺の知ってる芸人さんやねん。買ってくれや。」

と、本を定価の1188円で案内すればよいのだが、


このオッサンと回る事で、いらん「原田おさむの来る店」ステッカーと、オッサンの使う諸経費がのっかって、1188円のものを、2000円で案内せなあかん!

しかも、このオッサンの顔がきくわけではない!

僕に赤いジャケットを着せて、商店街を回らせて、扉をあけさせ、そこに自分の宣伝をねじ込んでくるつもりだ!


恥をかくのは俺だ!

そして、本なんてもう、関係ない!


だいたいパチンコ店員しながらギリギリ芸人している奴が、商店街をウロチョロしてるだけで、


「この人?暇人なん?」

と、思われる!かなりのイメージダウンだ!


もうステッカーの出来上がってる頃だ。

こんなオッサンと話をする値打ちもない!

おさらばだ!

逃げなければ!


Facebookをブロックし、電話を着信拒否にした。


あっ!俺!

大切な本を!

このオッサンに、10冊も預けてるやんけ!!

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