第40話囚われた芸人編①

これは自伝エッセイ「ピン芸人ですが、パチンコ店員やっています」が発売されてすぐの出来事。


本の売れ行きもまだ軌道に乗らず、出演しているライブで本の手売りをする日々が続いていた。

そんな僕のFacebookにとある男からメッセージが届いた。


「原田さん。私の地元で本を売りに来ませんか?私の住む⚫県は田舎なので、芸能人というだけでみんな嬉しがります。本が30冊~50冊は売れると思ってます。私がオファー出したら、⚫県まで来て頂けますか?

⚫県までの交通費、食事代は全て私が持ちますので。」


願ってもないお話だった。

すぐその男に返事をし、電話で話をする事になった。


「原田さん、いつもFacebook見てますよ。芸人さんなのに、賞もとって本も出されて、応援してますよ。」


「いえ、ありがとうございます!」


「さて、とりあえず大阪の⚫⚫商店街はご存知ですか?あそこで私よく飲んでますので、⚫⚫商店街まで来れますか?そこで一度会いましょう。」


「わかりました。」


「ちなみに、私の知り合いも一人連れて行きます。話をしたら、原田さんの本10冊買いたいって言ってましたよ!」


「ほんまですか!感激です!」


「ほな、大阪の⚫⚫商店街の喫茶店で待ち合わせしましょう。ほんで、私の地元⚫県に本を売りに来るお話をすすめましょう。」


願ったり叶ったりのお話だった。

そのはずだった。


しかしもう、僕という芸人は、踏み込んではいけない所に、もう足を踏み込んでいたのだ・・・


この世の中に、そんなうまい話など、存在しない・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る