就活拷問に耐えられたものは誰一人いない

ちびまるフォイ

その拷問にかけられた人は心が壊れるとか

「こいつ、いつまでたっても口を割りませんよ」


「へへへ……ムダだぜ。俺は特別な拷問の訓練を受けている。

 痛みやゆさぶりで吐かせようってんなら諦めな」


「あれを試すしかないか……」


拷問官は新しい拷問の準備をはじめた。


「なんだ? 今度はどんなおもちゃでいたぶるつもりだ?

 まぁ、なにが出てきても俺はぜったいにしゃべらないけどなぁ!」


「これさ」


拷問官が出してきたのはリクルートスーツと、就活用のカバンなど一式。

予想外の代物に男は目を丸くした。


「え……? なにこれ」


「今からお前には就活拷問を受けてもらう」


男は着替えさせられ、会社へ面接に行かされた。



「御社の企業理念にとても感銘を受けました!

 私も御社の一員となって地域活性化に貢献したいです!!」


男は心にもないことを、最大級の丁寧な言葉でつたえる。

数日後届いた手紙には面接の結果が書かれていた。



不採用


貴殿のますますのご繁栄をお祈り申し上げております。



「なんだよこれ!! あんなに必死にやったのに!!」


男は怒って紙を破いてしまった。

あんなに嘘八百を並べて、たいして好きでもない会社にへつらって

それだけ身を削った結果が不採用では割に合わない。


「ふふふ、これが就活拷問さ。情報を吐く気になったか?」


「誰が吐くか!!」


「では次の面接へ」


男が断り続ける限り就活は続いた。


嘘をつき続けるストレスはじわじわと男の精神をむしばんでいく。

不採用通知が送られてくるたびに凹み、どんどん気分は落ち込んでいった。


「……わかった……しゃべるよ……そのかわり勘弁してくれ……。

 これ以上作り笑顔で……嘘をつき続けて……無意味に終わりたくない……」


「よし、わかった。就活拷問はこれまでにしよう」


男の情報によると、拷問官の知りたいことは別の人間が持っているらしい。

すぐに別の人間を捕まえた。


「さぁ、答えろ! 名前を吐くんだ!」


「わたしニホンゴわかりませーーん♪」


「ほぅ、そんな態度を取ってられるのも今のうちだぞ」


今度の男はへらへらしながら答えようともしない。

拷問官はふたたび就活道具一式を用意して、就活拷問にかけた。


「ふふふ……いつまで耐えられるか楽しみだな」




就活拷問から数週間が経過した。


並の人間なら精神が壊れるほどの拷問なのに男はびくともしない。


「こ、こいつ……就活拷問がきかない……!?」


「どうして僕に就活拷問がきかないかわかるかぃ?」


「特別な訓練を受けていたのか!」

「ノンノン。そうじゃない」


「じゃあどうしてきかないんだ!!」




「ニ ー ト だ か ら さ」



「なん……だと……!?」



「就活することで、さも"社会復帰への努力はしてます"とアピールできる。

 なので、生活補助金はもらいつつもニート生活は継続できる。

 世間からも白い目で見られずに堂々とニートできるというわけさ」


「貴様! 就活拷問をニート継続のために使っていたのか!?」


「イエース。受かることのない就活ほど、ニート継続に役立つものはないね」


拷問官は顔をくもらせた。


「そうか……お前にはもっと強力な拷問が必要なようだな……」


「笑わせるぜ! 言っておくが、通常の拷問への訓練は受けている!

 死ぬくらいの痛みならきかないぜ! あはははは!」


拷問官は一度部屋の外に出た。


「今度はなにを持ってくる? 電気イスか? それともムチ?

 なにを持ってこようと、どんな拷問だろうと意味はないがな!!」


拷問官はオカンを連れて戻って来た。



J( 'ー`)し「たかし……あんたいつになったら結婚するの?」


J( 'ー`)し「孫の顔……見られるのかしら……」


J( 'ー`)し「いいのよ。お母さん気にしてないから……」


J( 'ー`)し「たかし、今度いい人連れてきてね……」




「うああああ! やめろ! やめろぉぉぉぉ!!!

 わかったよ!!! パンの留め具の名前を言うからもうやめてくれぇぇぇ!!」


「フッ……。結婚拷問に耐えれた人間はいない」


拷問官は男が吐いたパンの袋の留め具の名前をしっかりメモした。






J( 'ー`)し「たかし、どんだけくだらない小説書いてるの……」

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