第3話 マグダレナ
砂埃舞う荒野を、カウボーイハットの少女を背に乗せた大柄な獣が、時速80マイルを超える速度で疾走している。ミライとクルーガーだった。ミライは無造作に後ろを振り向くと、右手で大柄な
「もういちど
右に左に位置を変えながら量産型の
ミライはポーチから
残るは一体。
「クルーガー。横につけて」
クルーガーは急減速して
ミライは男の首元にナイフを突きつけたまま、ルックスに似合わぬドスの利いた声で尋問を開始した。
「さあ、アンタたち何者?」
話は少しさかのぼる。ミライとクルーガーはマグダレナ鉱山の地主であるアントニオという男の家を訪ねていた。
「だからよ。あいつが行方不明になっちまったんだ」
「あいつって誰?」
「クララってんだ。死んだ女房の連れ子だったんだけどよ。追い出すのも可哀そうだからうちに置いてやってたんだ。おおかた例の
「その割には、あんたずいぶん落ち着いてるじゃない」
「そ、そんなことはねぇ。ちょうど今、警察に捜索願いを出したんだ。それぐらいしか……他に何ができるっていうんだよ」
「できるわ。何しろ、アタシは探偵だもの!」
「は?」
「探偵。だから、アタシに頼みなさい。この事件の解決を」
「い、いいよ別に……だいたい、てめぇだって信用できねぇよ」
「御仁。報酬は先日掘り出されたという
「……好きにしろ。ただ、俺は何にもわからねぇからな。ああ、鉱山のほうに行くなら地図はそこにある」
こんなやり取りの後、とりあえず鉱山の方に向かっていたところ、まるで図ったように
「何にも知らねえ。何も言えねえ」
馬鹿の一つ覚えのように、知らないと言えないを繰り返す男は、
「はん。これは面白いわね」
ミライが取り出したIDカードを見て、クルーガーもゴロゴロと喉を鳴らす。
「アルハンドラ・ファイナンス。金貸しのようですな」
「この星系の事業者登録データを洗ってみて。アタシの想像通りならそんな会社は存在しない」
「……さすがお嬢様。慧眼です。アルハンドラ・ファイナンスなる金融業登録事業者は存在しませんでした。おそらく闇金でしょう」
「ということは……」
ミライはしばらく考え込み、そして肩を落として言った。
「なんだか……名探偵が扱うにはずいぶんと雑な事件よね。それに、お宝もありそうにないわ」
「お嬢様。念のため保険会社の契約状況をお調べしましょうか」
「そうしてくれる? それが終わったら、アントニオの家に戻るわよ。こんな乱暴な奴らだもの。素直にあきらめるとは思えないし」
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