第2話
よく頑張った俺。なんの変哲も無いただの自己紹介だったけどそれでも今は自分を褒め称えたい今日の気分だった。だって自己紹介1番苦手だもん。そして、これは先生の優しさなのだろう。俺が自己紹介している間に黒板に『自習(あまり騒がないように)』と書いてあった。すると、クラスメイトの1人が
「先生。自習って生物のですか?」
と聞いた。そして、わかってると言わんばかりに頷いた前河先生は
「自習とは自身で学ぶということです。ですから生物の自習では、なんの教科を学ぼうと先生は何も言いません。」
おお、この先生いい人だ
「そしてこれは余談なんですが、新しくやってきたクラスメイトと親睦を深めることは先生は道徳の勉強をすることだと思ってます」
これは訂正が必要なようだ。この人超いい人。目から汗が出そうだ。クラスのみんなもこの言葉に安堵を覚えたらしく、つぎつぎに俺へと質問の矢が飛んできた。具体的には「ここに来る前はどこに住んでいたのか」とか「趣味はなんですか」とかの転校生にする質問のテンプレみたいなやつばかりだった。
そろそろ質問がなくなってきて、先生がどこの席か言おうとした時に
「この学校に知り合いの人はいますか?」
と聞かれた。普通こんなこと聞かないだろ。と思いながら
「いますよ」
と答えておいた。すると、クラスがざわざわとし始めた。聞いてきた人もふざけて言った質問らしく、予想外の答えに驚いていた。先生もこの学校に知り合いがいるとは思ってなかったらしく、びっくりした表情でこっちを見ていた。
「それって誰?」
誰が言ったのかわからないがそんな声が聞こえてきた。なので、
「隣のクラスの
と答えておいた。そこでタイミングよくチャイムが鳴った。
授業の終わりのチャイムが鳴り、質問責めから解放されたので、とりあえず先生に教えられた席について次の授業を待つことにした。1 人でいるのもあれなのでクルシュと喋ろう。そうしよう。そこまで考えて気づく。クルシュが見当たらない。どこに行ったんだあの子?他の神様達のところに帰ったのかな?それとも、不可視のバフのせいかなん、不可視のバフ?頭の中に稲妻が走った。あっぶねぇ!あいつ俺以外から見えないんだった!頭の中に誰もいない空中を見つめて「ああ」とか「そっか」とか言ってる自の姿を想像して寒気がした。そんな転入生絶対に近づきたく無い。危険すぎる!これは1人の時じゃないとクルシュとは話ができないな。にしても一体不可視以外にどんなバフがあるんだろうか。と、そんなことに頭を回していると始業のチャイムが鳴った。教室に担当の先生が入って来る。教科書がないのでどうしようかと思っていると、隣の席の人がさりげなく机を寄せてきて教科書を見せてくれた。
「ありがとう」
「いや、いいよ。教科書ないんだろ?俺、
そう言って爽やかな笑顔を見せてくれた隣の席の人、もとい飯田君はとても人当たりがよく一言で言うとイケメンだった。
「うん、よろしく」
「そうだ、放課後時間あるか?」
おや、なんだろうか?どっか遊びに行こうぜ的なやつなら大歓迎だ。でも、男同士のアレな展開ならNGだ。趣味じゃない。
「どこか行くの?」
「ああ、ちょっといいところにな」
そう言って飯田君はいやらしい笑みを浮かべた。
後の授業は全部飯田君の教科書を見せてもらいながら受け、午前の授業が終わったと思ったらみんな帰ろうとするので飯田君に聞くと
「ん?今日は午前授業だぜ?」
とおっしゃってきたではありませんか。先生、僕それ聞いてないです。
「よし、じゃあ行こうぜ」
悲しんだらいいのか喜んだらいいのか迷っていると、そんなことを言ってきたではございませんか。
「どこへ?」
「どこって、いいところに連れて行ってやるって言ったろ?」
あぁ...そういや言ってたね。そんなこと
「なんなの、そのいいところって?」
怖くて少し声が上ずってしまった。だって、仕方ないじゃん。転入初日から友達になったと思いたい人(よく知らない)に『いいところに連れて行ってやる』って言われたんだよ?この状況が、理解できますか?私ならしたくありません。
「それは着いてからのお楽しみだ」
飯田君はそう言ってまた爽やかな笑顔を作った。
現状を言おう。手足を縛られ、目隠しをされている。つまり、監禁されている。では、なぜこんなに落ち着いているのかを言おう。これは夢だからだ。夢以外にこんなに状況に陥るわけがないじゃないか。ほら、足音が近づいてきた。そろそろ夢から覚める時間だ。
「気分はどう?」
夢オチ成らず。目隠しされているので声しか聞こえないが、声の高さから相手の人が女性だということだけわかった。
「フラグは建設するもんじゃないなぁって思いました」
ほんと、フラグクラッシュのバフを持ってる人しかフラグは建設したらダメですよ。俺みたいになりますよ。
「だって部室に知らない人が寝てるんだもの、こうでもしなきゃだめでしょ?」
「そういうもんですか...」
「そういうもんよ」
てか、なんで監禁されてんだっけ。思い出せない。あの後、飯田君に連れられて何部だったかの部室に連れてこられて、そこで出されたお茶を飲んでからの記憶がない。まさかあのお茶、実はアイスティーでサッー(迫真)でもされてたのか?そうではないと信じたい...
「これ、解いてもらえません?」
「どれ?」
「手足の縄と目隠しです」
「やだ」
は?やだ?なぜ?知るわけがないじゃないか!
「り、理由をお聞きしても?」
「ん〜?なんとなく?」
え、俺この人の気まぐれで監禁されてんの?何そのプレイ!興奮しない!!
「すみませんが、俺はMじゃないのでこんなことされても興奮しません」
「でも、されてそうな顔で寝てたわよ?」
「そんな人はいません。いたとしても俺ではないです」
そこまで言ってから、遠くから新しく足音が近づいてきた。こ、これは助けてくれるやつなのでは!?もしかしたら、もしかしちゃうんじゃないの!!いでよ救世主!!
「
この声は飯田君じゃないか!さすがイケメン!やることもイケメンだよ!!
「縄はもっときつく縛らないとダメだろ!!」
あんれぇ?来てくれた人って本当に飯田君?あの子ってもしかして...S?
「私女の子よ?君みたいにきつく縛れるわけないじゃない」
さっきまで俺を監禁していた女性こと香織さんが拗ねたように言った。
「そうだよ、飯田君。君がどれだけ高い束縛スキルを持ってたとしても誰もかれもが君みたいにできるわけじゃないからね!!ところで解いてくれない?」
これで解いてくれたら嬉しいな。嬉しいな!
「わかったよ。しゃーねぇなぁ」
目隠しがとれるとそこには飯田君と香織さんらしき女生徒がいた。
「よお、気分はどうだ?」
最高にHighってやつだ!!という言葉が条件反射で口から出かけたがぐっと堪える。
「普通だよ」
うん。縛られていたってのにいたって普通だ。
「そりゃよかった。ちなみにここがどこかわかるか?」
何を言ってるんだい飯田君。そんなこと言わないでくれよ。
「さ、さあ?知らない...よ?」
ほら、冷や汗が出て来たじゃないか。
「そうか。なら教えてやる。ここが連れて来たかったいい場所だ。」
だから言ったじゃないか。そんなフラグを建ててくれるなって。俺にフラグクラッシュのバフはついてないって。だからこの言葉を自分に送ろうじゃないか
「ようこそ、PSI《サイ》研究部。通称サイ研へ」
フラグ回収おめでとう。と
R.P.Gプレイなう!! @letter
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