第五節

「……、」

「……、」

 状況は……、

 コクトは「あーあー」と言う物言いしそうな顔で潰された少女を見て、サーバルに至っては半ば青ざめた表情で彼女を見ていた。

「ど、どどど、どうしようコクト!!」

「まぁ、幸い気絶してるだけだし、暫くしたら起きるんじゃ無いか?」

「ホント!? なんか、怪我とかしてないんだよね? 大丈夫なんだよね!!」

 コクトは半ばため息を吐きながら気絶した少女に近づいて状態を確認する。うつ伏せになっていた少女を、呼吸をなるべくさせる為仰向けに寝かせた。特に目立った外傷は無く、五体満足に無事である。幸い突然の衝撃で気絶しただけだったらしい。

「目を覚ましたらちゃんと謝るんだぞ」

「はーい……」

 すこし落ち込んだ様子で、サーバルは返事を返してきた。

 そんな彼女の表情を確認することは無く、コクトはまた考え込む。

(第二原住民……とでも呼べば良いだろうか、この子もサーバルと同じような特徴を持っているな……)

 人の容姿に獣のような耳と尻尾。

 服装もどことなくサーバルとは違うが、特徴的にはサーバルと同じネコ科の種族では無いかと思われた。

(草原で一匹……いや、もしかしたらこの子も此所で生まれたのだろうか? この島と共に……)

 未だ、謎は多いままだったが、少しずつ考えがまとまっていく。もしかしたら、獣が獣人化するような島なのかもしれない。となれば、そうする事が可能な何かしらの成分がこの島にはあるのか。そして、何故発現したばかりの島に既に生命があるのか。

 疑問の波は未だ彼を襲う。


「んっ……んん」

「あ、起きそうだよ」

 獣の少女は薄らと目を見開く。

 太陽の光が眩しいのか、ほんの少し瞼を閉じかけると、その光を遮るような影が彼女には見えていた。

「おーい、無事か?」

「……、」

 薄らと意識がもうろうとしている中、気絶していた獣の少女は、数秒影となっていた真っ黒なそれを見据えた。

 そして。

「うわぁぁぁぁぁぁあ!!!?」

 ゴンッ!!

「ほげぶッッ!?」

 見事なアッパーが、コクトの顎元に炸裂した。


「みゃ、みゃ……、みゃああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

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