第1653話「遂に入手したコーヒーの味は」
午前八時の屋上。
世界一高価な幻のコーヒーが現れた。
値段は味(一般人が想定する舌の味覚神経が飲食物に触れた時の感覚を指す言葉。個体間で差がある)よりもずっと希少性に由来するので、アンチマテリアルライフル女子高生は高いから美味しいとは思っていなかったが、それでも世界一高価なこのコーヒーとはどういった味なのかという興味があった。ガトリングガン女子高生が贈ってくれたそれを挽き、ドリップ、口を付ける前に香りを堪能する。霊猫香……シベトンがコーヒーの果実らしさに深みを持たせるのかと想像していたが、意外なことに華やかさは控えめだった。まろやかな香りというべきだろうか、優しく母に包まれているような感じ。麝香がそうであるように、粉っぽさが嗅覚器への刺激を穏やかにするためかもしれない。
そして一口。香り同様、飲み口もまた柔らかだ。全体として刺激が和らいでいる印象を覚える。味そのものは苦すぎず濃すぎず、非常に調和が取れていて、飲むほどに心が落ち着いてくる。飲んだあとには苦味がすっと消え、爽やかさが残る。山間で新鮮な空気を味わっている感覚に近い。そうしてしばらく置いたあとに、気づけばまた次の一口を飲んでいる。
そういう意味で言えば、無意識的に惹かれるような何かがあるのかもしれない。抵抗感なく飲める。自然と飲んでしまっている。不思議と飲み進め、飲み干してしまう。
確かに良質だと思わせる味わいではあった。値段のことを考えなければ、だが。
そこにいきなり長いレールガンを持った女子高生がやってきて、とにかくすごい攻撃で捕獲したジャコウネコを屋上に連れてきた。
ジャコウネコ科の動物許可なき捕獲およびペットとして飼うことを禁じられていたため、レールガン女子高生は指導室に連行されていった。
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