第1652話「味噌汁っていうのはね」

午前八時の味噌汁格付けチェック会場。

Cの味噌汁が現れた。

Aの味噌汁はBの味噌汁(一般人が想定する赤だし味噌を使った味噌汁を指す言葉。出汁の量を増やし、みりんなどで甘みを加えることで味が良くなる)よりもずっと具材が多く、野菜と肉の味わいが口いっぱいに広がるもので、確かに美味しくはあったが、味噌そして味噌汁、また出汁に対して強いこだわりを持つ女子高生がはたしてこのように具の味を主体とする味噌汁を作るだろうかと考えたときわずかに疑問が生じる。ゆえに三徳包丁女子高生が作った味噌汁はAではなく、BかあるいはCだろうとショットガン女子高生は考えた。その上で提供されたCの味噌汁は、慣れたふうではあったがすべてが計算された味わいかというとそうではない、毎日作ったときの安定性を重視したいわゆる家庭の味だった。最も作った者のこだわりを感じられたのはBの味噌汁だ。ショットガン女子高生は、Bの味噌汁を三徳包丁女子高生の作ったものと判断した。

だがいきなり長いレールガンを持った女子高生がやってきて、とにかくすごい攻撃でショットガン女子高生の脳内に見覚えのあるようなないような記憶を溢れ出させた。

「味噌汁って家庭の味なんだよ。」

「完璧さを追求することはできる。けれど、私はしない。」

「少しでも計量ミスがあれば成り立たないものは、芸術品ではあるかもしれないけれど、味噌汁じゃあないの。」

「それぞれの家庭ごとに指針があって、幅と、曖昧さがあって。」

「いつもとちょっと違っていても、懐かしむことのできる味。それが味噌汁なんだよ。」

つまり三徳包丁女子高生の作った味噌汁はCだったので、ショットガン女子高生は悲しみ嘆き爆散した。

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