第1644話「物は試しとやってみたらかなり良かったんだけどなんかちょっと違うなって気もしてきた」

午前九時の本屋。

発売したばかりの週刊誌が現れた。

最近話題沸騰のアイドルを特集したインタビュー記事はコラム(一般人が想定する短い批評文を指す言葉。ライターの主観による意見が述べられており、取り扱うお題とライターの技量によって面白さが大きく変化する)よりもずっと多くのページが割かれていた。クールビューティーなコーヒー好き女子高生アイドル。印刷された写真には対物ライフルを抱え、斜め下を向きながら照れくさそうに頬を搔くアンチマテリアルライフル女子高生の姿があった。インタビュー記事によると、彼女はもともとアイドルに興味はなく、家族が勝手に応募したことがきっかけでオーディションに参加したのだという。勝手なことして、普段からそうだ、とぶつくさ文句を言う様子がしばらく綴られた後で「でも」と切り替え。「こうして私がファンの皆と出会う未来が生まれたのは、間違いなく家族のおかげだから……」と控えめな感謝が記されていた。すげえ良かったのでレールガン女子高生は週刊誌を書店にあるだけ全部買って朝礼前の神代高校で配布した。

だが昼頃になっていきなり違和感が襲い掛かってきて、とにかくすごい攻撃で「アンチマテリアルライフル女子高生がアイドルオーディションに参加することになり塩対応アイドルとして人気になった」という仮想未来を破壊した。

屋上でガトリングガン女子高生となりきり女子高生と語り合う様子を見て、やっぱり普段通りの風景が一番だ、と思い直した。

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