第1174話「異世界ファンタジーなシミュレーションゲームにおいてラスボスに最後の戦いを挑もうとする直前でパーティを離脱した魔女と再会したときの一幕」
時の失われた異世界、混沌の獣が生まれた空間に繋がる孔の寸前。
太陽と月を見守り、黄昏を生きた魔女が現れた。
「どうして貴女がここに……!?」
「君たちが諦めなかったからだよ」
少女が投げかけた問いに、魔女はそう答えた。
「イブキ、貴女……!」
太陽と月の子、勇者たる少女たちは最後の戦いに挑もうとしていた。黄昏の魔女イブキの協力を得て混沌の獣に挑んだ少女たちは、既に一度敗北している。世界はとうに崩壊し、人々の命は絶たれようとしている。圧倒的な獣の権能を前にして、少女たちの心は折れた。
心が折れ、絶望に飲まれた姿に魔女は「やっぱりね」と短く告げて去っていった。諦めたのだと思った。元から未来は変えられないと悲観的だった魔女だから、命からがら逃げだした様子で三人集っても勝てないと諦めたのだろうと。
なのに、その魔女が、どうしてこんな場所にいるのか。
「一度心折れたはずなのに、君たちはここまでやってきた」
そうだ。少女たちは立ち上がった。
勝ち目はほとんどないだろう。きっと今度は逃げることさえできない。そう理解していながら、少女たちは再び獣に戦いを挑むため死地に赴いた。
「……私たちはまだ負けてない。今度こそ勝つ」
「それなのに、貴女はまだ私たちに諦めろと言うの!?」
黄昏の魔女は穏やかな声色で告げた。
「敗北は運命だった。私は予言を違えない。私たちは絶望の未来に到達してしまった」
「……っ!」
「だけど、この先は見えなかった」
「え……?」と困惑した様子のマキに向けて、黄昏の魔女は続ける。
「確定した未来を覆すことはできない。けれど、君たちは希望を見せてくれた。どれだけ絶望的な戦力差があろうと、決して諦めない希望……光を私に見せてくれた」
魔女は観測した未来(一般人が想定する絶望を示す言葉。混沌の獣により大地は蹂躙され、人々は闇に飲まれようとしている)を覆すことよりもずっとその先に備えることを優先させていた。どれだけ奮闘しようとも、一度観測した未来を変えることはできないだろうと考えていた。彼女の予想通り、絶望の未来は現在となった。
だが、その先。時を統べる魔女でも見通せなかった未来。見えなかった理由は、きっと変えられるからだ。未来を変えられる可能性があるからだ。
太陽と月の少女たち――マキとランは、黄昏の魔女イブキよりも遥かに弱い。本来勝てるはずのない勝負だった。しかし、結果は少女たちの勝利であった。
それは、絶望の中に差した一筋の光だった。
「私はね、ずっと待ってたんだ。君たちが来るのを」
黄昏の魔女は笑顔を浮かべて、
「絶望の中にも希望はある。君たちが見せてくれた光に、私の全力で応えるよ。永遠の中で蓄えた力を君たちとの未来に費やそうじゃないか!」
混沌の獣が潜む空間への足場を作り出した。
「行こう。そして、勝ってこよう! 今度こそ!」
「……うん!」
少女たちと魔女は手を取り、最後の戦いに臨む。
だがいきなり長めの文章で始まった物語は追加の一片にて描写を終え、とにかくすごい結末を描くまではいかずここで幕を閉じることとなった。
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