第976話「ウサチャン」

掲載1000日目直前キャンペーン_ゲスト回 作:綿貫二三生


午後二時の月うさぎの里。

敷地内を動き回るウサギに興奮する小学生の集団が現れた。

ウサギ(ここに登場するウサギはいレ生読者でない人が思い浮かべる、何の攻撃性も持たない普通のウサギである。月うさぎの里にいるウサギは大体でかい)は、手袋をつけて触ってくださいと壁に貼ってあるのだが、興奮した子どもたちにそれが見えるはずもなく、小さな手が一斉にウサギに向かっていった。引率の教師がちゃんと手袋をしなさい、と声をかけるのも耳に入っていない様子の小学生たちは、広場のウサギたちに向かってそのまま走っていった。

だがいきなり長いレールガンを持った女子高生がやって来るよりも前に、空がぐずついたかと思うと雨が降り出した。小学生たちは一斉に屋根のある所に向かい、その時初めて他の客の存在に気づき、彼らが手袋をしていることに気づいた。引率の教師の下に、たちまち手袋を求める列が出来る。

長いレールガンを持った女子高生は、餌を求めて近づいてきた白いウサギに飛び掛かられて餌をひっくり返していた。

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