【8】何もなければ(1)
「いや」
「どんな子だったの?」
「ん~、そうだなぁ。勝気な子……かなぁ。でもなぁ、あの性格になったのは俺が告白してからだったしなあ……」
「やさしい子だった。いつも俺のことを理解してくれようとして。勝気になったのは、きっと、俺と喧嘩友達みたいな関係になろうとしたのかって、今に、なって……」
途中で聞こえなくなった声は、深い悲しみを嘆いているようだった。悩み抜いて出した過去の行動を否定しているようにも思えて。
受け止めないといけない過去に、
振り返れば時間が流れるのは、はやいものだと
昨夜、
再会を喜ぶ会話が終わると、
──何もなければいいな。
『
「抜け出すのなんて、久しぶりだ」
けれど、また次の瞬間には、
「ははっ」
ふうっと一息つき、浮かれていたと恥じる。
一先ず、この土産で
そうして、
船を乗り換え、昼食を食べていても。取った部屋へ行ってみていても。
ひとりになって何度も思い出してしまうのは、
『妹をよろしくね、かわいがってね』
だからこそ、だ。『
愛しい想いが、深いところで罪の意識と絡み合っている。太い木に複雑に絡んだ蔦のように。
初めて
髪も瞳もクロッカスだった。間違いない。
リラの髪と瞳を受け入れるように
そのころだ。同時に『
それなのに。
──大臣は……俺の質問にハッキリとは答えなかった。
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