【7】痛いほど(2)
なるべく素直な言葉で、きちんと伝える努力をする。
「昔も言ったでしょう? 覚えているかな……
誤解されることが多々あっただろうと船上で悔いたばかり。まさか、こんなにもはやくに実感するとは。
「ちょっと、何で笑うの? 笑うところじゃないでしょう」
引き続き、
「ああ、ごめん。うれしくて」
「まったく……まぁ、いいけどさ」
と、
どこへ向かうでもなく、フラフラと歩き出したふたり。
「ありがとう」
改まって、
「どういたしまして」
軽やかに
こうして、ふたりは暫時、他愛のない会話を楽しんだ。
程なくして、扉はノックされ、
「妃の
「
「初めまして」
「
「はい。やさしくしてくれています」
「おめでとう。今、何ヶ月?」
「ありがとうございます。そろそろ四ヶ月になります」
うれしそうに頬を染めて話す
漠然といつかは
「ふしぎだね、命って」
「話をしていかない?」
と
ふたりが入室し、扉を閉める。ドアノブから手を離した
「ちょっと、感動した」
と、前置きし、
「おめでとう」
率直な気持ちを言えば、
誰が先、後と順番をつけて考えるのは無意味だ。わかっているが、切望するだけに叶った者を目の前にして、羨んでいるだけだ。
一方の
「ありがとう。大事にできるように……努力してみる」
と苦しそうに言う。
驚いたのは、
──もしかしたら、親になる覚悟がない? それとも……。
「俺には、そんな風には思えなかったから」
恋を割り切れなくて、望まない結婚をして、今でも苦しんでいるのだろうか。もしそうだとするなら、
好きだと言っていた子はどうしたのかと、
「そっか。……あの子には、会ってないの?」
「あの子?」
「昔、告白するって言っていた子」
そこでまた
「出て行った」
ちいさなため息が、
「兄上と俺の結婚が決まった当日に……ああ、その子は『
「告白は、した……んだよね?」
様子をうかがいながら
「想いを伝えたら、関係は悪化した。
一言目は、
「真実を知っても俺は、諦められなかったんだ」
父が、同じ。それは、つまり──。
まさか、
今になって、昔の質問への返答を理解できた。『それは考えていない。無理だから』。
「俺たちは、腹違いとは言え……兄と妹だった」
「俺が父上の子ではなければいいと何度も思った。だけど、そんなことは……」
思い返せば、外見を美しいと囁かれる声が
これまで
「未だに気持ちにケリをつけられない。告白も、受け入れてもらえるはずなんてないって、わかりきってて言ったのに。……なのに、未だに消化できないんだ。おかしいだろ、俺」
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