【3】何に変えても(2)
「大臣、俺も手伝うよ」
姿を表したのは、軽装備を身に着けた
「貴男も忙しいでしょう。無理はいけません」
この仕事量は自業自得だと言ったのに、
「ここを継いだのは、俺でしょう?」
と、おだやかに笑い声を混ぜて
「いつまでも大臣に甘えていられないよ」
呆気に取られて、大臣は何も言えない。けれど、呆然とその様子を見ていれば、いつもどこかを張り詰めていた
「
大臣の声に、
「まるで……あのころのまま、成長されたようです」
大臣は胸が熱くなる。
大臣らしくない様子に、
「大臣」
『後悔しているのか』と言おうとした
大臣はうっすらと涙を浮かべている。
「私を恨み……憎しんだことも、あったでしょう」
声を震わせながらも、大臣らしい力強い声が発せられる。更に、悲痛な声は出る。
「辛かった……ですね」
それは、
大臣は、
「それ、今生の別れみたいに聞こえるんだけど」
「いいえ、肩の荷が降りたのです」
「そう。それなら、労わってあげないとね」
その笑みを見て、大臣はうれしくなる。そうして、大臣も業務に戻りつつ、いつの間にこの業務を覚えたのかと
「
なぜか
「そうですか。
宮城研究施設は地下にある。以前、
「
「別に」
つれない返答に、そういえば、
「どうしたの?」
と、逆に心配をされてしまった。大臣の眉が下がる。
「色々ありましたからね」
「大丈夫だよ、もう」
大臣を安心させるような、やさしい言い方。思わず顔がほころぶ。──それを
「大臣も、おだやかになったんじゃない?」
そう言っている
「私の心は、貴男と比例するようです」
しんみりと言った大臣の言葉は、
「貴男が、
「大臣も、年を取ったんだね」
「それは否めませんね」
「長生きしてね」
サラリと
「そうかんたんには、死ねません」
「大臣は致命傷を深く負っても、死ななさそうだよね」
「悪運が強いんですか?」
「それは、俺も同じかも」
「どうして俺がひとりで行くんだ?」
「いえ、途中まで
あんなにおだやかになった
大臣は、
「これまで
不機嫌になった理由がそれかと、大臣は思わず笑ってしまう。だが、
大臣は慌てて笑いを堪え、悪気はないと言うかのように弁明する。
「申し訳ありません。往復で四日間ですが……
具体的な日数を言っても、
「ああ、そうですね。
そうしたのは誰だ? という視線が
護衛を解任された日に婚約。それからは尚更、一緒にいて、結婚してまだ一ヶ月余り。とはいえ、婚約してからは一緒にいる空間の密度はどんどん濃くなっていることだろう。
「過度にいすぎるのも、よくありませんね。そうですね……多少は離れる訓練も必要かもしれませんよ? どうですか、
大臣は
こう言われたら
「わかった。その訓練、受ければいいんでしょう」
大臣は幼子に向けるような、やさしい笑みを返す。
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