【3】何に変えても(1)
何にしても、無事に子宝に恵まれていることを願うだけだ。
──長かった。
大臣は長く深いため息をつき、空を高く見上げる。──初めて
気づけば
決して切り離せないと生きてきた二十五年間を捨て、
『
『
「ほう……貴様も『
と、何かにつけて大臣を仮名で呼びつけるようになる。
王の策略だ。
七歳の
すると、王はいい気味だと笑うように、大臣をあざけ笑った。
「
その言葉を聞いて、大臣は笑い返してやりたくなった。お前はなにもわかっていないと。大臣が
大臣は王をこのまま生かそうと思った。何も知られてはいないと安堵をして。名を捨てる前の過去など、どうでもいい。ただ、
幸い、
双子が行方不明と意識喪失になってしまったことを逆手にとり、事態が好転したわけだ。
けれど、大臣は王の策略にきちんと気づけていたなら、と長年苦しんだ。
ただ、もう、ようやく解放されたと思っていいだろう。
──やっと、終わった。
名を戻すことは許されないが、
目には
この先、己の行く末を思い描けば、華やぐような場所は広がらず。だが、恐れることはない。それが、当然の報いだと心得ている。
深呼吸を終えると大臣は職務へと戻って行く。
大臣は黙々と業務に取りかかっていた。
ふと、扉がカチャリと開いた。
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