【4】拘泥
白いレースが基調とされた、どこか幻想的な部屋。部屋の一番奥には、総レースの天蓋が二重に重なって垂れている。天蓋の中は、広いベッド。アクセントでほんのりと薄い、ピンクの模様がある。ここは、
広いベッドの上にはしなやかな肢体。肩ほどのクロッカスの髪の毛と、長いリラの髪の毛がシーツの上で交ざり合っている。五感を駆使して互いの想いを確認し合う行為は、時間の概念を喪失させるような空間の中で繰り返され。けれど、長いリラの髪の毛を持つ方は、なぜか満たされるよりも切なさばかりが積もっていくようだ。
「離れたくない」
ふたりでいれば、いつも幸せそうに笑う彼の異変に、
「どうしたの?」
その指先は、なんとも愛おしそうで。
それなのに、どうしたことか。
愛しい想いと比例するように深く、切なさが増していくだけのようだ。
こんなことは初めてだろう。
「このまま、とけてしまいたい……」
ついには、右目から一粒の涙があふれて落ちる。そのあとも落ちていく涙は止まらず、溺れるようにキスをして、
ふと、
動きを止めた
「そんなこと言っていると、いじめちゃうよ?」
「ぃ、いい……もう、いい。大丈夫だから」
「本当に?」
冷静さを取り戻したのか、
けれど、そんな姿も
「私もさみしいけど、数日間だけだから……お互いに我慢しなきゃね」
にこりと微笑んで、弾んだやさしい声を出す。
翌日も
「何で、
不服そのものだ。
「
大臣がなんとかおだやかな
「ああ、おはよう。手伝ってもらってんの。
「お兄様とお姉様のお役に立てるなら、うれしい」
事もあろうか、
「ほどほどに
それを聞いて、
そんな
「何で俺をそんなに敵視するんだか」
「
「はぁい」
「
「行ってらっしゃい」
心配をしていた
その一瞬だけ固まったのは、
「行って来ます」
「
「大丈夫だって。それより、
「はいはい」
「
こうしてふたりの背中を見送り、大臣は
「どうして、
「俺が何も知らないってわけにもいかないじゃん。だから、俺は居残りなの」
「そう! これから、お兄様にはたっぷりお勉強していただくの」
すると、
「先生、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします」
「おやおや、
「ウソ!」
悲鳴のような
「もう、大臣ったら」
「本当ですよ? 我が城の宮城研究施設を取り締まっているのは、
「へぇ。じゃあ、先に白旗あげておかなくちゃ」
「お兄様まで。……違うの、
「何かあれば、呼んでくださいね」
大臣が声をかけると、
「ありがとう」
と、笑って手を振った。
微笑ましく皆を見送って、大臣は呆然と
今、背を向けているふたりはまさに『兄妹』と言っていい光景なのに、重ねたふたりは『男女』にしかならなかった。
何年、姫と護衛を見守っていても、
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