【12】疑心(2)
ふたりの声に
湯気でホワッと曇った眼鏡は、
「ああ、どうぞ。冷めないうちに」
なんともおっとりとした空気を漂わす。
「何かあれば、拝見させていただけないでしょうか。
「そうだね。折角遠くから来てくれたのだから、いくつか持ってくるね」
「
「配慮に欠け、申し訳ありません。ですが、
「うう……そうだけど……」
「大丈夫ですよ。
納得しない
「ご迷惑だったかしら」
「もし、そうだったとしたら……
「そうね」
「そうですよ」
しばらくして
「わぁ、
「
女子たちがはしゃぐ姿を
視線が合うと、
「
と、今度は資料を手に取るように促される。これには流されるように、
「これは記録というより、まるで特別に作成された……資料のようですね」
「見せて」
「地図も載っている。
「今もだよ。この辺り一帯を
「森の奥には教会が……今も、研究所の先に教会もあるんですか?」
「今は敷地内に墓地もあって、色んな人が出入りできるようになっているよ。
いくつも現実と重なる伝説に、
だが、
「どうしたの?」
「いや、何かがおかしいと思いまして……この地図の世界の中心は
「ひとつの大陸だけ……の世界みたい?」
ずばりと言った
「世界には三大陸ある。それが常識です。それが、ひとつの大陸だけなど……」
「そう、今はみっつの大陸に分かれたけれど、その昔、大陸はすべて繋がっていた。大陸はひとつだけだった。……そう記述では残っている。それが、どうかした?」
「いえ……」
そう言って
「そういえば」
と、
「すぐ近くに
「え……」
「こわい?」
「はい」
怯える女子たちに対し、
「じゃあ、この辺りにしておこうか。楽しんでもらえたかな」
「ありがとうございました」
「片付けてくるね。それと、
「はい」
「ありがとうございました」
「いらっしゃるなんて、珍しい来客だ。何しにいらした?」
「さあ?」
「さあって。……って、お前、これ! 持ち出し禁止じゃねぇか」
「ああ、これ?」
もっとも、黄色のテープが示す意味は、
「さあ、問題です。このシールを貼ったのは誰でしょう?」
「え? えと……あ~、誰だよ」
事の重大さをサラリと流され、更に
ふと、
「父さんだよ」
「
「父さんはあるときから、
父を語るときの
「なるほど……って、それでお前が持ち出していい理由にはならねぇぞ」
「そうだね、気をつけま~す。そうだ。
「はいはい」
疑問形だが、
浅葱色よりも薄く見えるツンツンと立った前髪。浅葱色よりも薄い──白緑色の髪。彼の瞳の本当の色を知る者は、今は本人しかいない。
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