【7】儚い美形(1)
城主の息子と一剣士。本来は人前で言葉を崩してならないのは、
しかし、堅苦しい雰囲気を
「ふたりだけの方が、俺も気楽に話せるからさ」
「ありがとう」
ふと、
「あのふたり、うしろから見るとよく似ているんだね」
と、
「
「知らなかったら、か。う~ん、
最高位の姫、
「実際、多いよ。
もっとも、
「さっき、色々と言葉を選びながら言った?」
「そりゃそうだよ。
「立場は
「いいや、激しく遠い。やっぱり、世界に君臨する姫と五位の
「低い? あれ、俺との身長差が十センチ以上あるとは思っていたけど、更に伸びた?」
真顔で言う
「いい加減伸びないよ。俺、二十四だよ?」
友人を気楽に持てない
大臣の意向に気づいても気づかないふりをして、無言で賛同したのだ。
「
ただ、永遠に続くものではないと、どこかで──影武者と思うなら、余計に心のどこかで思っていたのかもしれない。
「
似た境遇だからこそ、わかることは多かった。けれど、ひとつ──理解したくないこともあった。
「今のように、クロッカスの瞳と髪を恥じていてほしくない」
「確かに、社交場で『どこの姫?』って目を引くから……気にするよね」
クロッカスの色彩、その意味を理解している者が集まる社交場では特に目立つ。
かくいう
「何かしらの事情を抱えて、出身を隠したいと思う者の中には、髪を染める者や短髪にし身分を捨てる者もいる。
「はぁ、
「ああ、色んな噂は耳にする」
率直に言う
「そうだよね」
「ただ、これまでのことは過去だ。
「俺も、そう思う」
「折角会えたんだ。少しだけ、手合せ願いたい」
「うん。……え、あ……どっちだっけ」
「こっち」
うれしさのあまり動揺する
そのまま、ふたりは稽古場へと向かう。
板張りの床が見えてきたころ、使用人たちの黄色い声があちこちで聞こえ始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます